君と描く物語１０

＃４９７ ページ47

梅ちゃん達と一緒に乗り込んだボート

引っ張られる速度が徐々に上がっていき、風を切る程の速さになり水しぶきが顔にかかる冷たい感触

そして、ぱっと見上げた太陽が眩しくて視界が真っ白になって

梅ちゃんと善逸くんが私を呼んでくれるその声が聞こえて、はっきりと記憶にあるのはそこまでで


それからは…

ぼんやりとした意識の中、鼻を掠めたのは 潮の匂いと何となく…先生の匂いがした様な気がした…

現実か夢か分からない曖昧な状態で、次に目が覚めた時には……


A｢…ん…っ…ここ何処……？｣

ゆっくり目を開けると、見えたのは見慣れない木製の屋根と……これ、布団？


｢…目ぇ覚めたか？｣

A｢…！？｣

私が横になる布団の脇から聞こえた声に目を向けると、そこには濡れ髪でこちらを見る宇髄先生が居た


え…一体どういう状態…？

天元｢ここ海の家の二階の休憩スペース

事情話したら落ち着くまで休むのに使ってくれってさ

お前 海で気失ったんだぞ…覚えてねぇか？｣

A｢…薄らと｣

そっか、私 ボートに乗ってる最中に目眩を起こして海に落ちたんだ…

もしかして先生が助けてくれたのかな…？だから濡れて…

体を起こして布団の上に座り直す

A｢…！｣

気付くと水着以外何も羽織っていなかった私に、一枚だけ増えていた ぶかぶかのパーカー

これ、さっき先生が着ていた上着

そっか…だからぼんやりした意識の中で、宇髄先生の匂いを感じたんだ…

A｢…///｣

付き合ってる頃に、宇髄先生に抱きしめられている時の様な暖かさと安心感を思い出して 無意識に頬が赤くなる


天元｢…やっぱり体調悪かったんだな…もしかして昨日寝れなかったか？｣

A｢…っ｣ﾄﾞｷｯ

不意に飛んできた質問に、図星を突かれて何も言えず黙り込む

天元｢……悪い…俺が変な事言ったからだよな｣

申し訳なさそうに言う宇髄先生


聞いてみてもいいのかな…昨日の事


怖かったけど、勇気をだして口を開く


A｢…どういう…意味だったんですか？｣

天元｢え？｣

A｢昨日の…あれ(・・)って……｣

天元｢…Aに避けられるのが…ってやつ…か？｣

A｢…｣ｺｸﾝｯ


聞いてしまった…


誰も居ない静かな一室
聞こえるのは波の打ち寄せる音と、外にいる他の生徒達の笑い声だけ


何て返ってくるんだろう…



私は期待していた…先生と、まだやり直せるチャンスがあるんじゃないかって……

もしそうなら…



だけど……

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