君と描く物語１０

＃４５４ ページ4

放課後になり、今日は無一郎くんが来てくれるからと図書室に寄らずに真っ直ぐ美術室へ向かった

無一郎｢先輩｣

A｢あれ、早いね！もう来てたんだ｣

私が部屋に着くと、既に座って待っていた無一郎くんが笑顔で迎えてくれた

無一郎｢早く先輩と話したくて｣

A｢ふふ、そんなに？会わない間もたまにメッセージのやり取りしてたのに｣

無一郎｢先輩分かってないな〜。画面上の文字のやり取りと、直接顔見て話すのは全く別物だよ｣

…無一郎くんのその言葉に、確かにそうだな…と妙に納得してしまった

画面上のやり取りを何度繰り返していたとしても、声を聞いたり顔を見たり…そういう会話に勝る事は無い

その相手が好きな人なら尚更だよね


ｶﾞﾗｧ…

天元｢あれ！？何で時透が居るんだよ！｣

無一郎｢A先輩に会いに来たんですよ。嫌なら席を外してもらっても構いませんが｣

天元｢顧問だぞ、俺は…っ｣

A｢ちょっと、二人共…｣

うわ…この感じも久々だ…

天元｢つーかお前、あのインタビュー記事は何だよ！｣

無一郎｢あ！見てくれたんだ！良かった｣ﾆｺｯ

天元｢将棋の話だけしてりゃいいのに、余計な事を｣

無一郎｢余計とは何だよ。あれは最重要事項ですよ｣

天元｢ど！こ！が！｣

A｢二人共ストーーップ！｣ﾊﾞｯ

放っておいたらいつまでもこんな調子なんだから…

私が間に割って入ると、先生は不服さを残しつつも教卓に腰を下ろす

天元｢ったく…けどプロ入りはめでたい事に変わりはねぇな。おめでとう｣

無一郎｢どーも｣

天元｢これから将棋の方も忙しくなるんじゃねぇのか？授業の方は大丈夫なのか？｣

そっか…私はその世界の事について詳しくないからあまり分からないけど、やっぱりプロ入りするって事は
今まで以上に忙しくなっちゃうんだよね…

無一郎｢何とかします。とりあえず休学とか中退は考えてない…

どれだけ忙しくても…短時間だったとしても
出来る限り授業には参加して、将棋を続けながらちゃんと現役で卒業してみせますよ｣

A｢…無一郎くん｣

何だか感慨深い…
あんなに進学に否定的だった無一郎くんが、忙しくなっても学校に来たいって言ってくれるなんて

天元｢…変わったな、お前｣

無一郎｢変わるきっかけをくれる人と…出逢えましたからね｣

A｢え…｣

無一郎｢僕、先輩に恥じない人間になるから…だから見ててね…A先輩｣

A｢…うん、応援してるね｣

＃４５５→←＃４５３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す