君と描く物語１０

＃４６８ ページ18

天元side


今朝のホームルームから、ずっとAと視線が合わなかった…

＿天元｢進路希望調査票の締切は今日までだ。まだ未提出の奴は放課後までに出すように！以上｣

…ﾁﾗｯ

＿A｢…｣

視線を下に落としたまま、微動だにせずに眉を下げたその表情は
それが全てを物語っている様で、直接声を掛ける事も望まぬ様子に何も言えなかった


昼休みになり、次の授業の準備の為に美術室に向かって道具を出したり資料を用意し
一通り終えた所で職員室に向かう為に階段を下りていく


進路希望調査票が出てないのは、正直後はAだけで…

放課後までに残された時間も僅か


何となく、最終日ギリギリに出してくるんじゃねぇかなって予想はしてたけど
待つ側もまあまあしんどいもんだな…やっぱり……

あいつが今どう考えてるのか、本人に聞いたわけじゃないから100%把握出来てるわけじゃない

だけど嫌な予感は未だに止まらなくて…


天元｢………ん？｣ﾁﾗｯ

タタタﾀﾀ…ｯ


職員室の近くまで行くと、走り去る一人の女生徒の後ろ姿が見えた

一目見てAだとわかった

…と……言う事は…っ


ｶﾞﾗｧｯ！

杏寿郎｢む！どうしたんだ宇髄！そんなに焦って…｣

天元｢わ！煉獄！悪ぃ…ちょっとな…っ｣

もしかしてと言う焦りから、職員室の扉を勢いよく開けたら
目の前に居た煉獄が目を丸くして驚き俺を見た

事情を説明する余裕すら無い俺は、煉獄の肩に手を置き横をすり抜けると
自分のデスクに小走りで駆け寄った


思った通り…デスクの上には一枚の用紙……
二つ折りになっていて、手に取らないと中身は見えなくて

手に取ろうと、最後の一歩を踏み出した瞬間…

小芭内｢宇髄｣

天元｢…｣ﾋﾟｸｯ

伊黒の深刻そうな声に、動きが止まり顔を見る

小芭内｢その用紙、Aからの提出物だ…

不在だと伝えたら渡しておいて欲しいと｣

天元｢…伊黒が代わりに受け取ってくれたのか…あいつ、なんか言ってたか？｣

小芭内｢……普段、提出物は早めに出すあの子が、こんなにぎりぎりになるまで提出を渋って……

本人は、"良く考えた"…と、言ってはいたんだがな｣

天元｢……｣


ｶｻ……ｯ


記入欄を見た俺の心臓が、深く…大きく……脈打った


天元｢………何を…どう良く考えたんだかな…っ｣ｸﾞｯ


そこに書かれていたのは、今まで通りの地元の大学ばかりで……



一番したくなかった選択を

する時が来てしまった……

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