君と描く物語１０

＃４９２ ページ42

天元side

杏寿郎｢…そんな事になっていたとは……｣

煉獄よりも状況を把握している伊黒が、上手く言葉に出来ない俺に代わって煉獄に説明をしてくれた

Aが県外の大学に興味を引かれている事
でも頑なに志望しない事

その理由が、自分に自信が無いからと話していた事…


でも伊黒が知っているのはそこまでで…
一番重要なのはここからだから

杏寿郎｢でも…だからと言って何故別れるにまで至ったんだ…

大きな節目に直面して、初めての事で足踏みしてしまってるだけだろう？｣

不思議そうに煉獄が尋ねてくる

天元｢違う…Aがその大学を選ばなかった理由はそれだけじゃないんだ｣

小芭内｢まさか…っ｣

天元｢…あぁ……俺と離れる事を不安がって、その選択肢を自ら除外した｣

杏寿郎｢…！｣

小芭内｢やはりそうだったのか……俺が志望しない理由を尋ねた時、少し回答に迷いがあったのを感じた

たぶん本人の口から聞いた理由も嘘では無いのだろうから、その違和感は確信へとはならなかったが……

でも、だからと言って別れなくても…
話し合いで導いてやる事も出来ただろう｣

話し合いか……

天元｢俺が都内の美大に行けって言って行かせるのは簡単だ
でもそれじゃ本当の意味でのあいつの意思じゃないだろ…

あいつには都内の美大に行くにしても、地元に残るにしても 俺の存在抜きで考えて欲しい
これは他の誰でもない…Aの将来に関わる進路の事だから

それに、例えば今俺が"俺達なら離れていたって大丈夫だ…絶対別れたりしない"って
今しか見てない言葉をかけたとして、それを信じて向こうに行って

今まで見た事もない所で、新しい出会いも沢山あるだろう

もしかしたら、その中に俺なんかよりもっといいと思える奴が居るかも知れない
その時に、俺の言葉が呪いみたいに足枷になってAの選択肢や可能性の芽を摘みたくないんだ

だから離れるしかなかったんだ｣

Aを守りたい…その気持ちだけが俺を突き動かしてるんだ


小芭内｢…ﾊｧ……馬鹿だな、お前は。不器用すぎるくらい馬鹿だ｣

天元｢…っ｣

小芭内｢…だが、自分を犠牲にしてでも相手の為に
最善を尽くしたいと思う気持ちはわからなくもない

話くらいはいつでも聞いてやるから、あまり溜め込みすぎるなよ｣

天元｢伊黒が優しいと調子狂うな…｣

小芭内｢なんだと？｣

天元｢けど、ありがとな…聞いてもらえて楽になった

また吐き出したくなった時はよろしく頼むわ｣

小芭内｢あぁ…｣

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