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#15 ページ15

私が行ってみたかった場所、それは管理棟と本棟の間を少し抜けた所にある
色取り取りの花が咲き誇る円形に作られた花壇のある中庭

A「わぁ…!やっぱり綺麗」

昔お姉ちゃんから聞いた事があって、入学したら行ってみたい場所だった

四季折々の花が綺麗に咲き、またそれを囲むように聳える木々は
春から夏にかけては綺麗な緑を…秋には紅葉を、そして冬には切なげに枝をみせる
日本の四季をぎゅっと閉じ込めた様な場所があるって

別の中庭には桜の木も植えてあるって言ってたな……

A「この中庭、今の時期はアネモネが植えられてるんだ」

ピンク、紫、青…いろんな色があるんだな
誰がお世話してるんだろ、凄く綺麗に手入れされてる

花壇の見渡せる位置にベンチがあり、そこに腰掛けて描く準備をする

春の陽が心地よく降り注ぎ、ベンチにも木漏れ日が差し
まだ真っ白な画用紙の上で踊っている様に見える

少し前までは、真っ白な画用紙を目の前にすると息が詰まって感じたけど
今は落ち着いて向き合える…
それどころか少しそわそわしている自分がいる

この真っ白な紙に、私の目に見えている風景を描いていける
誰かの求める名に応えるようにではなく、私の為の絵


A「そうだ…私、昔はこんな風にわくわくしながら描いてたんだった」

黒い渦に飲まれてしまって、すっかり忘れてしまっていた気持ち
久しぶりに蘇ってくる幼い時の記憶

家の近くの広い芝生のある公園
駆け回って遊ぶ弟達の傍で、私は姉と二人でそれを見守るように絵を描いてた

あの頃、私の世界は紙を通してどこまでも繋がっている様に感じていた


もう一度描ける、きっと今ならあの時みたいに


すーっと大きく体いっぱいに自然の匂いを吸い込み、清々しい気持ちで画用紙に目を落とす

画用紙の上を走る私の手は止まる事なく進み続け、時間も忘れ没頭する



風に揺れる草木、それに乗って鼻を掠める甘い花の蜜の香り

まだ下書きだけのモノクロな世界は、他人からしたら味気ないものかもしれないけど
私の目には動画のように現実と共に揺れ、共に香りを放っている


楽しくて嬉しい…自分の描きたい物を描ける幸せを噛み締めながら
何度も風景と手元を交互に見る


A「…ふう、あれ?今何時かな」

集中して描いてたら、気づけば空はすっかりオレンジ色に染まっていた


そろそろ美術室に戻らなくちゃ…と、我に返った瞬間

「ひと段落ついたか?」

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ラッキーカラー

あずきいろ


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設定タグ:鬼滅の刃 , キメツ学園 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:P | 作成日時:2021年1月6日 2時

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