そのままの君が好き【短編集】 (ページ8)

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斉藤壮馬ページ8

【斉藤壮馬×同い年彼女×いたずら】

職業:スタイリスト

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#斉藤side

パシャッ
シャッター音が小気味よく響き、その度にフラッシュが瞬く。

カメラマン「壮馬くん目線こっち。・・・そうそう、いいよー」

今日は雑誌の取材だ。
衣装2パターン撮影した後、インタビューの予定になっていた。

カメラマン「今日、壮馬くんいつも以上にいい感じじゃない？めっちゃ枚数増えるんだけどw」

斉藤「ありがとうございます」

カメラマン「その表情もいただきー」

今日の僕がいつも以上にいい感じ？それもそのはず。今日のスタイリストは彼女であるAだからだ。

スタッフ「それじゃ斉藤さん衣装チェンジで」

斉藤「はい」

彼女のもとへと駆け寄る。

斉藤「お願いします」

『こちらへどうぞ』

Aは僕を衣装スペースへ案内すると、すぐに次の衣装を準備し始めた。ここは他のスタッフからは死角になる。Aとの距離を詰めた。

斉藤「今のどうだった？」

『次はフォーマルなスーツスタイルになります』

斉藤「ねーどうだった？」

Aの顔を覗き込んで、再度問いかけると

『・・・かっこよかったよ』

斉藤「ありがと。Aの選んでくれた衣装だからね、当然だけど」

『モデルがいいんだよ』

Aは謙遜しながらも、嬉しさを抑えきれていない顔をする。知ってるよ。この仕事大好きだし、プライド持ってやってるもんね。
渡された衣装に袖を通す。Aは少し僕から離れて、真剣な表情で衣装をチェックする。唇を片側だけ噛んでいるときは集中しているときだ。その顔、ほんと好き。

斉藤「キスしていい？」

『え？』

Aは驚きの声を上げたあと、きょろきょろと辺りを見回す。それから僕に近づくと小声で

『駄目に決まってるでしょ？』

と言ってきた。

斉藤「なんで？」

『なんで、って。仕事中！』

斉藤「ちぇー」

わざとらしく唇を尖らせてみるが、あっさり無視された。

『ネクタイ締めるから上向いて』

Aが僕の顎をぐっと押し上げる。はいはい。Aはまた片側だけ唇を噛んで、手際よくネクタイを結んでいく。
チャンス！
そっとAの前髪を上げて、その額にキスをした。

『ちょっと！』

Aは慌てて僕から距離をとると、額を押さえてまた周りを見た。大丈夫、誰も気づいてないよ。僕がそんなヘマをする訳ないでしょう？

斉藤「今はこれで我慢する。・・・でも」

彼女の耳元に口を寄せ、ささやいた。

斉藤「帰ったら覚悟しといて」