そのままの君が好き【短編集】 (ページ2)

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下野「よく頑張ったね」

後ろからぎゅっと抱きしめてと声をかける。Aちゃんはコクンと頷いて、そのまま自分の膝に顔を埋める。小さくしゃくり上げる声が聞こえた。泣き顔は見せてくれないけれど、それでも泣けるくらいには信頼されているらしい。

一頻り泣いた後、まだ鼻をグズグズと言わせながら、彼女は顔を上げた。

『ありがとうございました』

下野「ん」

くしゃくしゃとAちゃんの頭を撫でる。

下野「でも、なんでドラマCD聴いてたの？」

俺としては疑問に思ったことを素直に聞いただけのつもりだったけど、彼女はゆっくりと目を逸らした。

下野「え、何？」

『だって、紘さんの声聞いたら、安心するから』

小さな声でそう答える。

んんんんんんん・・・・っ。
うちの彼女可愛すぎるのでは？

『仕方ないじゃないですか。紘さんの声、好きなんですよ・・・』

そう言って、Aちゃんは拗ねるように口を尖らせる。

下野「ふぅん・・・」

Aちゃんが弱っているのはよくわかっていたけれど、そんな可愛いこと言われたらついイタズラしたくなるのが、男の性。そっと彼女の耳元へ唇を寄せる。わざと少し低めの声で

下野「Aちゃん」

と名前を呼ぶ。それはさっきまで彼女が聴いていたドラマCDの声に近い。

『・・・！ちょっと、それは、ずるい、です』

尻すぼみになりながらAちゃんは言った。

下野「あら、弱っているところにつけ込むのは恋愛における常套手段ですよ？」

『もう充分好きですから！』

両手で顔を隠しながら、彼女は言う。もう一度、彼女の耳元に近づいた。何かを察知したAちゃんは身を捩って逃げようとするが、腕に力を入れて動きを封じる。

下野「A、大好きだよ」

『・・・っ』

俺のこともっと好きになってよ。
こんなに俺は君のことが好きなんだから。