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(落ち着けー、落ち着け私)
鼻で深く呼吸しながらスプーンで一口掬い、彼の口に運んだ。
広臣「ありがと、」
「美味しいですよね、酸っぱさがあんまなくて」
広臣「ちょっと甘過ぎな。でも美味い」
高級なパイナップルを使いっているらしく 酸味はほとんどない。
ゼリーを半分ほど食べた時、Aはふと気になったことを口にする。
「歌ってみてどうでした？」
広臣「転調ないしリズムは問題ねえな、音程に関してはまー…Aが俺らのことよく考えて作ったのがよくわかった」
「？」
広臣「歌いやすかったよ、もっと攻めても良いんじゃないかって思うくらい」
「物足りなかったですか？」
広臣「聞く人はどうなんだろうな、俺らの伝え方次第だとは思う…
だけどこれを人前で歌う時のこと考えたら こんくらいの安心感でもいい」
「(私が居ない)一ヶ月後…」
広臣「Aが居なくても、皆を安心させられる三代目らしさ。大切に歌うよ」
「…登坂さんは、どう思っているんですか？」
Aが三代目の活動を休止して海外に行く事を、広臣はどう思っているのだろう。一番聞きたくて、だけどそれが怖かった相手。
広臣「お前の思うままに。ただ いつも心の中に俺がいればいい」
「、え」
まさかそんな風に言われるとは思っていなかったから、Aは目を見開いた。でも広臣はそんな彼女の様子に穏やかに笑うだけ。
広臣「少しの間だけ 我慢してやるよ」
今まで散々すれ違ってきたのだから、地球一周分の距離くらい離れていたところで 幾らでも我慢できる。ただそこに、心が繋がっているという確証があるなら。
「我慢できなくなったら…？」
広臣「さあな。お前を捕まえに行くかもしんねえ」
「逃げ切れる自信ないです…」
広臣「その気になればいくらでも逃げるだろ、Aはそうゆう奴だと思うけど」
(登坂さんだから…求められたらきっと逃げられない)
どちらか選ぶために旅をするのに…世界中のどこにいても、もう何をしても その存在から逃れられない気もしているんだ。
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作者名：とまと野郎
| 作成日時：2015年1月29日 16時
