君をさがしてた。episode4 …2 (ページ47)

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久保「じゃあまず誰から行く？Aは仮歌入ってるからー、隆二か広臣」

隆二「……」

広臣「じゃあ俺、行こっかな」

ディレクターの久保さんと細かい音程の確認やリズムとりを行った後、ハモりの確認も兼ねて一度一人ずつ譜面通りに歌おうという流れになった。

誰から行く？の問いかけに名乗りを上げたのは広臣の方で、隆二の様子を伺い見て何かを察したようだ。

久保「じゃ広臣、入ってー」

広臣「はい、

…あんまイジめんなよ？」

隆二「それはAの態度次第♪」

Aに聞こえないよう小さな声で交わされた会話。
いい笑顔の隆二に苦笑いの広臣はそのまま防音室の中に入っていった。

広臣《今いる場所を逃げ出すことはそう凄く簡単だけれどそれはあなたが大切にしていた夢もきっと無くすことになるーーー…♪》

マイク越しに聞こえてくる広臣の声を、椅子に座りながら真剣に聞くA。勿論隆二も真面目に聞いてはいたが、その手には期間限定のゴールデンパインゼリーが握られていて。

隆二「ほら」

「…なんですか」

隆二「食べなさい」

「まだ言ってるんですか、だから…」

隆二「俺が笑ってるうちに食えよ？そろそろ無理矢理突っ込むぞ？」

「……」

ニコニコニコニコと最近では笑ってる事が多かったせいで忘れていたが、Aは隆二のメンチ切ったり眉根を寄せて睨んでくる顔が大の苦手だった。

とにかく怖い。
その顔を見ると反射的に萎縮してしまう。
(＊episode0飲み会・ワイン編参照)

隆二「で、本当に食わねえの？」

「…食べます」

そうゆうわけで、広臣の甘い声がすぐ近くで響いているというのに、Aの心の内は戦慄していた。

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