君をさがしてた。episode4 …2 (ページ36)

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健二郎(いつから始まったんやろうなぁ)

Aを好きになった始まりは。

この気持ちに気付いたのは確か、年初めの収録ん時。でも、本当はもっと前から…

俺の方に見向きもしないAにずっとイラついてた。
そのせいで嫌がらせも沢山して、周りには散々嫌いやと公言して。

だけど嫌いなわけじゃなかった。

自分に全く興味を示さないこいつにイラついてたのは結局。

健二郎(理屈抜きで、惹かれてた)

こんな切ない思いをすることになると、1年前の自分は考えもしないだろう。
世界で一番大嫌いなやつが実は、自分の人生の恋愛観を変えるような女だったとは今自分が過去に飛んで言っても信じないだろう。

「、健さん…」

ずっと無言で外を見続ける健二郎に、遠慮がちに声をかけるA。

健二郎(Aはホンマに魔性の女や)

気持ちが切ない時こそその声を愛おしく感じるなんて、反則すぎるやろ。

こんないい男ほっぽって他の男好きになるとか馬鹿やろ。ほんで最後までそれ隠してただ冷たく俺を突き放そうとするなんて、不器用すぎる。

健二郎「ありがとう…」

「え？」

健二郎「こんだけ一人の女の子を好きにさせてくれて、ありがとう。」

そのくせ最後まで一度も俺の方を向くことはなかったけどな。

健二郎「俺な、Aを好きな自分めっちゃ良い人になれてるような気がしててん。真っ直ぐに誰かを想える自分に、少しだけ自信が持てたんや」

「っ、」

健二郎「ホンマの俺は凄くわがままで、やりたい事やり出したら中々周りに気使えなくなったりするとこあんねんけど…Aを好きになってからは、何よりAに尽くしたいと思うようになってた」

自分の中にも、そうやって人を想える気持ちがあるのだと気付いて驚いたのはつい最近のことで。人のために尽くす強さを知ったんだ。

「わ、わたし…あの健さんに沢山、たくさん、もらって…

私の方こそ本当に…ッ！」

震える声で何かを言おうとしたが、その途中でバッと頭を下げる。

ああ、泣くのを我慢している、自分が泣いたら俺の切ない気持ちの行き場がなくなってしまうと分かっているから。そう気付いた時に、健二郎は自分の方が堪えられなくなっていた。

情けない…でも最後なら、許してくれ。

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