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＊
「〜〜♪」
健二郎「すっかりお気に入りやなぁこの曲」
「いつも流れてるから覚えちゃいました」
健二郎「LDHアーティストの車にジャニーズ流れてるって変な感じするし内緒な？」
「え、別に変じゃないです。私も嵐さん聴いてます」
健二郎「GUTS？」
「とか色々、この前二宮さんからアルバム貰って」
健二郎「あら ええなあ」
暗い真夜中の街を健二郎の車が走る。周りを見れば半分がタクシーで、人通りはほとんどなく 風が気持ちいいからと車の窓を開けてみても、2人の存在に気付く人はいなかった。
健二郎「俺こんくらいの時間何気に好きや」
「私もです」
健二郎「無防備になれる気するもんなあ？」
「そうですね、こうやって都心の道を窓開けて走ってても悲鳴一つ上がらない」
健二郎「あんま手ぇ出したらあかんで？」
「はぁい…」
窓枠に肘をかけ、顔を撫でる風に心地好さそうに目を細めるA。その綺麗な横顔をまじまじと見ていたいが、彼女を乗せているため脇見など絶対に出来ない健二郎。
「……」
健二郎「…」
いつの間にか会話は減っていき、車の中にはKinKi Kidsの『to heart』が流れているだけ。
信号待ちの中、ふと 助手席の窓から運転席の窓へ、サーッと緩やかに 秋の匂いが混じる風が吹き抜けた。
健二郎「もうAの気持ちは変わらないんか？」
「…はい」
突然の質問に短く返答したAの心臓は、ドキンと大きく跳ねていた。
Aの気持ち と言われた時、海外に行く事より先に頭に浮かんだのは広臣に対する感情の事。
今日こそ話すと意識していたからこそ、その言葉をそういう風に捉えてしまったのだ。
健二郎「寂しなるなあ…」
信号が青に変わり 発進するエンジン音の中でもしっかりと聞こえてくる。
「…健さん」
健二郎「ん？」
「今まで、沢山沢山 ありがとうございました」
健二郎「嫌やな 今生の別れみたいやんか。A本気で戻ってこないつもりか〜？」
「そんなつもりは…」
子供っぽくて生意気な、こんな私を好きだと言ってくれた。
いつもどんな時でも優しくて 辛いときこそ全力で笑わせてくれた。
誰かに想われることがこれだけ幸せで楽しい事だと教えてくれた人。
『健二郎を解放してあげるんだ』
私の手で。
この優しい愛情に、終止符を打つんだね。
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作者名：とまと野郎
| 作成日時：2015年1月29日 16時
