奥さん ページ40
約束した日は、加藤さんとシフトを合わせた。ゆかりちゃんがこっそり代わってくれたのだ。
あかりとゆかりちゃんが職場にいるから、秘密にしててもそこまでつらく後暗くないんだと思う。友達がいて、よかった。
加藤さんはお店まで車で一緒に行こう、って言ったけど、丁重にお断りした。
いやいや、私が加藤さんの車に乗ったらもう、決定打じゃん。
「別に帰りが一緒になったっていいでしょ。たまたまそんなことだってあるじゃん」なんて加藤さんには言われたけど。
まったく、女子の勘ってやつを全然わかってないな加藤さんは。
加藤さんが言ってたお店までは歩いて15分くらい。
どこからか金木犀のにおいがする秋の夕方をひとりで歩いていく。
いい気持ち！
その中華屋さんは、初めての場所だった。
近づくうちに、にんにくと油の香りがして、おなかが鳴りそう。
おかしくないかな、ってハリのあるロングスカートの裾を見下ろす。
きっちり結わえていた髪は解いてきたけど、きっとゴムの跡がついてると思う。
徒歩と車じゃ、絶対私の方が遅く着いちゃう、お待たせしてしまう！と思って最速で出たから、うまいこと直せなかった。
お店の扉を開けて、中に入る。
清潔そうな店内をぐるりと見回して、奥の座敷にいる女の人とうっかり目が合う。
すごい後悔した。
せめて、加藤さんがもう着いてるか確認してからお店に入ればよかった。
というか、友達ってどんな方ですか？とかって聞いとけばよかった。
友達って、幼なじみさんのことか！
ばっちり目が合ったので、お辞儀をする。
そのままオドオド近づいた。
幼なじみさんのお膝には信じられないくらい可愛らしい顔の男の子。
そういえば見た事ある！一度、移動図書館で。
そして向かい側には、なんかクマさんみたいなコアラさんみたいな優しそうな男の人。
髪色がエキセントリックで、心からの初めまして。
「……あの」
「加藤さん、でしたよね」
「あっ、そうですこんばんは」
お互いにぺこぺこしてたら、幼なじみさんのお膝にいた男の子が、茶色く光る目をまあるくした。
「え？シゲとお名前おんなじなの？奥さん？かわいい！」
「え！奥さん！」
奥さん！？
かわいい！？
慣れない言葉にうれしくてくすぐったくてオロオロしてしまう！
相手は小さな子だと言うのに！
落ち着いて私！
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ぺんぎん(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございます。お話の中の一人一人が丁寧に描かれていて、ほんとうにほんとうに素敵です。これからも応援しています。 (2020年3月4日 1時) (
レス) id: f15aa4c564 (このIDを非表示/違反報告)
すもも - 完結おめでとうございます！いつもこっそり拝見しておりました(笑)じぇにさんの作品はどれもひらがなと漢字の使い分けが絶妙で、ニュアンスがとっても丁寧に伝わってくるところが大好きです。新たなじぇにさんの作品に出会える事を願いつつしばらくこの作品に浸ります。 (2020年1月28日 23時) (レス) id: 7bc6073c03 (このIDを非表示/違反報告)
もか - いつも楽しく拝読しております！主人公ちゃんの不安や怖がりな部分と、それでも弱いだけだったり気持ちが揺らいでるわけではない芯の強い部分がようやく報われたような気がして、このまま幸せになってほしいと感じました、、これからも楽しみにしています！ (2019年12月28日 0時) (レス) id: 729ed0c340 (このIDを非表示/違反報告)
あやぽにょ - やっとですね（；＿；）よかった、、、！ (2019年12月18日 1時) (レス) id: f2bcd42dc1 (このIDを非表示/違反報告)
yume.(プロフ) - 初めまして、いつも楽しく読ませて頂いてます！増田くんのストーリーから読んでいて、この物語は主人公ちゃんの名前を若菜にして読んでるのですが、加藤さんの幼馴染の名前を自分にしたくて名前の設定を増やして貰えませんでしょうか、、、？ (2019年12月15日 19時) (レス) id: 28edb9fce5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：◯じぇにー◯
| 作成日時：2019年11月5日 21時
