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めくった新しいページの先は、思った以上の糖度だった。
加藤さんは私といてもまったく苦にならないようで、その後ほとんど毎日私のアパートでにこにこと過ごしていらっしゃる。
普通に泊まろうとするし。
でもなんだか全部明け渡したら飽きられちゃいそうで怖くて、お泊まりはお断りした。
もはや私でなく私のアパートが気に入ってるのか?
結局もうひとつの椅子を加藤さんはすっかり組み立ててしまって、自分用として使ってる。
今日も別のシフトだったのに、先に私んちにお帰りになられていて、私のことを「おかえり」って迎えてくれた。
当然みたいにごはん作ってくれてて、2人でダイニングテーブルで食べる。
せまい部屋だから、テーブル二辺は壁にくっつけてあって、椅子は90度の角度で斜向かいに置いてある。
近くてドキドキ。
食後に、冷たくてあまい緑茶を飲んだ。加藤さんが水出しで作っててくれたやつ。
「やっぱソファー買うかな」
「あれ?加藤さんち、ソファーないんですか?」
「Aんちに置くソファーの話ね」
「実はこの前思ったんですよね!友達が来てくれた時とかには確かに必要かなって」
「いや俺は今まさに必要感めっちゃ感じてるけどね」
「必要感を感じる?」
「校正された!」
普通に聞き返したのに、加藤さんがアハハ!って笑った。
「え?必要ですか?今?なんで?」
椅子かたいかな?
木だしな。
「今ほしいね、Aとくっついて座りたいじゃん」
「……えっ」
「引いてんじゃねえよ」
そうやって私への好意がだだ漏れなことに全然慣れない!
何それ。意味わかんない。って言いたいのを飲み込む。つきあってるんだった。
加藤さんは椅子ごと私のそばに来た。
逃げ場がなくて、壁にどんどん追い詰められていく。
椅子同士をぴったりくっつけて、加藤さんは私を覗き込んでにこにこした。
「……照れてる」
「うう」
そのまま腰を引き寄せられて、加藤さんにぴったりくっつく形。
腕が肩に回ってきて、空いた方の手がふんわり頬に触れた。やわらかい手のひら。
「ね?ソファーあればこういう時便利でしょ?」
「……ん?」
「隣座ってイチャイチャしてー、このままなだれ込めるし?」
そう言いながら、加藤さんがこめかみのあたりに唇を寄せた。
あわわ!何言ってんの意味わかんない!
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ぺんぎん(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございます。お話の中の一人一人が丁寧に描かれていて、ほんとうにほんとうに素敵です。これからも応援しています。 (2020年3月4日 1時) (レス) id: f15aa4c564 (このIDを非表示/違反報告)
すもも - 完結おめでとうございます!いつもこっそり拝見しておりました(笑)じぇにさんの作品はどれもひらがなと漢字の使い分けが絶妙で、ニュアンスがとっても丁寧に伝わってくるところが大好きです。新たなじぇにさんの作品に出会える事を願いつつしばらくこの作品に浸ります。 (2020年1月28日 23時) (レス) id: 7bc6073c03 (このIDを非表示/違反報告)
もか - いつも楽しく拝読しております!主人公ちゃんの不安や怖がりな部分と、それでも弱いだけだったり気持ちが揺らいでるわけではない芯の強い部分がようやく報われたような気がして、このまま幸せになってほしいと感じました、、これからも楽しみにしています! (2019年12月28日 0時) (レス) id: 729ed0c340 (このIDを非表示/違反報告)
あやぽにょ - やっとですね(;_;)よかった、、、! (2019年12月18日 1時) (レス) id: f2bcd42dc1 (このIDを非表示/違反報告)
yume.(プロフ) - 初めまして、いつも楽しく読ませて頂いてます!増田くんのストーリーから読んでいて、この物語は主人公ちゃんの名前を若菜にして読んでるのですが、加藤さんの幼馴染の名前を自分にしたくて名前の設定を増やして貰えませんでしょうか、、、? (2019年12月15日 19時) (レス) id: 28edb9fce5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:◯じぇにー◯ | 作成日時:2019年11月5日 21時