きらきら ページ44
次の週、例のバイトの子と夕方同じタイミングでカウンターに入った。
なんとなく、緊張。
隙を見て、絵本コーナーの作り物をちまちまこなして手元に集中。
こんな時に限って、静かで暇なカウンター。
小さな声でバイトの子に話しかけられる。
「……加藤さんって、彼氏と一緒に住んでるの?」
「……住んでない……ですけど」
「じゃあ、加藤さんの方が入り浸ってる感じ?あ、加藤さんていうのは彼氏のほうね」
「……彼氏」
「つきあってるよね?加藤さんと加藤さん」
急な確認にびっくりする。
急に動悸がして、なんて答えたらいいのか迷う。
「いや、そんな驚く?みんな知ってるよ?」
「みんな!?」
「うん」
不思議そうな表情で、私を見つめる。
「ところで加藤さんと休みの日どこ行ってる?このへんデートするとこないじゃん?最近マンネリでね〜」
「……彼氏さんと、長いんですね」
「うん、学生の時からつきあってるの。もうあんまりにもすることがなくなってきたから一緒に住もうか、って話してるとこ」
そう言う彼女の笑顔はきらきらして、可愛らしくて、本当ににっこりしてしまう。
「……すごい、同棲とか」
「でもだんだんそうならない?家賃一件分無駄に感じてきてる」
「確かに!」
「やっぱり加藤さんがAさんの方に泊まりに来るの?」
「……その方が、多いかもしれない」
「だよね?男子は場所に帰るんじゃなくて人に帰るんだよねたぶん」
勝手な決めつけだったな、って恥ずかしくなってきた。
妬まれちゃう、だって。私。
何言ってるのかな。
世界は私が思ってる以上に優しくてあったかいのかもしれない。
覆しようのない結末は、きっとハッピーエンドで。
明るくきらきら光る綺麗なものが、おさまるところにまあるく優しくおさまるような、あったかいものなのかもしれない。
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ぺんぎん(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございます。お話の中の一人一人が丁寧に描かれていて、ほんとうにほんとうに素敵です。これからも応援しています。 (2020年3月4日 1時) (レス) id: f15aa4c564 (このIDを非表示/違反報告)
すもも - 完結おめでとうございます!いつもこっそり拝見しておりました(笑)じぇにさんの作品はどれもひらがなと漢字の使い分けが絶妙で、ニュアンスがとっても丁寧に伝わってくるところが大好きです。新たなじぇにさんの作品に出会える事を願いつつしばらくこの作品に浸ります。 (2020年1月28日 23時) (レス) id: 7bc6073c03 (このIDを非表示/違反報告)
もか - いつも楽しく拝読しております!主人公ちゃんの不安や怖がりな部分と、それでも弱いだけだったり気持ちが揺らいでるわけではない芯の強い部分がようやく報われたような気がして、このまま幸せになってほしいと感じました、、これからも楽しみにしています! (2019年12月28日 0時) (レス) id: 729ed0c340 (このIDを非表示/違反報告)
あやぽにょ - やっとですね(;_;)よかった、、、! (2019年12月18日 1時) (レス) id: f2bcd42dc1 (このIDを非表示/違反報告)
yume.(プロフ) - 初めまして、いつも楽しく読ませて頂いてます!増田くんのストーリーから読んでいて、この物語は主人公ちゃんの名前を若菜にして読んでるのですが、加藤さんの幼馴染の名前を自分にしたくて名前の設定を増やして貰えませんでしょうか、、、? (2019年12月15日 19時) (レス) id: 28edb9fce5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:◯じぇにー◯ | 作成日時:2019年11月5日 21時