《6/20完結》君の嘘、僕のウソ【N.K 0617BD】 (ページ32)

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32…side N ページ32

　
　
　
次の日の仕事帰り。
オレはまたその場所に立っていた。

あの時みたいに一度きりなんてことはもう絶対にヤだったから。

来る保障なんてないけど、時間の許す限り待ってみようと心に決めていた。

(あ…！)

そしたら、案の定。昨日と同じベージュのコートを羽織った彼女が今日は一人でやってきて。

ドク、ドク、とはやる心臓をそっとおさえる。

(よしっ…！)

いざ、彼女を目の前にしても話すきっかけを掴めないだろうと考えてたオレは。

顔が見えるか見えないかの瀬戸際で、ズボンの後ろポッケに忍ばせておいた定期入れを自然に見えるようにサッと落とした。

その瞬間、カサッと音がして、彼女の視線は明らかに下を向いた。

それでも見て見ぬ振りして歩みを止めないオレ。

すれ違ってすぐカツカツとゆーヒールの音が止まって、今度は少し早いヒール音がこちらに近づいてきた。

「あの……」

と弱めに肩を叩く手。

ん？と振り返ると、落としましたよ。って、定期入れを差し出す彼女。

ここまでは想定通りだった。

こっから拾ってくれたお礼に食事でもどう？ってゆうベタな展開を頭の中で繰り広げていたのに。