30…side N ページ30
それからすっかり空っぽになったオレの心。
仕事に影響は出なかったものの、私生活は完全に廃りきってた。
別れを選んだのはオレだけど。
詩乃と別れたところで、あの子の情報は名前以外何もわからないから、
オレからは動きようがなかった。
６年前のあの時のように偶然会えたら…
なんてそんな神がかりな運をオレが持ち合わせてるわけでもなく
ただただ会えることを信じて、街をブラブラするだけ。
(やっぱ、会えねぇか…)
そして見つけられず、家に帰っては落ち込む日々。
酒を飲んだって、それは一時の快楽で。
アルコールが抜けてしまえばもぬけの殻。
(はぁぁ……)
完全に行き場をなくしたオレが縋り付いたのは。
結局、名前も知らない、欲だけを吐き出させてくれる。都合のいい女。
ただただ乱暴に抱いて。オレの鬱憤を晴らすがための、無意味な行為は余計オレを惨めにさせた。
けど、それ以外に逃げ道はなくて。
出会えないなら、適当に女引っ掛けて恋愛ごっこして…
……そっか。詩乃に出会う前の自分に戻ればいいんじゃん。
そう思いはじめたら、もう止まんなかった。
気付いたら、そんなタラシな生活が３年、４年……８年、９年と続いて。
恋愛のスキルだけはやたら上がるくせに、肝心なあの子は姿を見せないまま。
アラサーも通りすぎて。あと２年もたてばアラフォーの仲間入りだと。
周りの友達も続々と結婚していく中、残されたオレはもはや一生ぼっちなんじゃないかと思いはじめた33歳。クリスマスの直前。
「クリスマスにさすがにぼっちは寂しいよな…」
また適当に女を引っ掛けようと
赤、白、緑がきらめくイルミネーションの中を、寒さに身を縮こまらせながら歩いていたオレ。
けど辺りは当たり前にカップルばかり。
独り身で歩いてる女なんてそうそういなくて。
そーいや考えたこともなかったけどあの人…結婚してるのかな…
なんて嫌な現実が頭を駆け巡ってた時。
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作者名：AMY | 作成日時：2017年6月5日 8時
