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奈央との電話を切ってすぐ、
パーテーションで区切られた薄いカーテンの向こうがパッと明るくなった。
きっと奈央から電話が来る前の私なら、「今日は少し早いんだな」くらいにしか思わなかったと思うけど、今はもう怒りしか湧いて来ない。
ペタペタと人をバカにしたみたいに鳴る足音がそれを増長させる。
(もう、限界…)
手をギュッと握って覚悟を決めた。
アイツを泣かせて、傷つけるってゆー使命はたぶんもう果たせないけど、
最後、罵声とゆー罵声を浴びせて、アイツの心、ぐにゃぐにゃにへし折ってやろうじゃないの…！
プシュー、とプルタブを開ける音と共にまたペタペタと歩く音。
こっちに来る！って思った時にはもう、カーテンで遮られてた光がベッドにまで流れ込んできた。
「あれ？A起きてたの？」
ヨレヨレのTシャツに短パン姿のカズが、っしょ！と枕元に座って、缶ビールを一口、喉に流し込んだ。
プハーって陽気に喉を鳴らして、サイドボードにカコン、と缶ビールを置くと、ベッドの上に乗っかって、ジーッと私を見た。
何、その目。
真っすぐ私を射抜くようなその目は…。
「どーした？泣いた？」
目元にカズの指が伸びてきて、触れそうになるのを直前でパチン、と振り払った。
その指がちょうど缶にあたって、ガコン、と床に落ちた音がした。
「…って！」
何すんだよ！って顔で私を睨みつけるカズ。
奈央のことはアンタのせいじゃない。
けど、アンタみたいのがこの世にいる限り、一人、また一人傷つく女の子が増えるってことなの。
まぁ、わかんないよね。
アンタに傷ついた痛みなんて。
フラれるなんて一生無縁な顔してんもんね。
「そんなことして楽しい？」
「はぁ？」
「人を騙すようなことして何が楽しい？」
声が震える。
けどこれは怒りに震える声。
「は？何言って……」
「私は騙されないよ」
「カズの優しさも、好きだって言葉も全部ウソだって、知ってるんだから」
"この…性悪恋愛詐欺師が！！"
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作者名：AMY | 作成日時：2017年6月5日 8時
