《6/20完結》君の嘘、僕のウソ【N.K 0617BD】 (ページ18)

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「………A……」

私の名前を涙ながら辛そうに言う声に、思わず耳から離して画面を見た。

「……奈央？どーしたの？」
「………」

…奈央だった。

ヒック、ヒックと喉が鳴る音。

鼻を啜る音。

「……奈央？」

何だか嫌な胸騒ぎがした。ゾワゾワと。
10年前の記憶がフラッシュバックする。

「私…」

「もう…ダメかもしんない」

その言葉にスマホを持つ手がガクガクと震えた。

奈央とはなんだかんだでもう８年の付き合い。
その間に彼氏がいたことは何度かあったけど、別れても案外吹っ切れるのが早くて、次の日にはなんてことない顔して会社に出勤してた。

仕事で辛いことがあっても顔には出さないし。

もちろんこーして泣くことなんて初めてだった。

ただ唯一感情の起伏が現れるときがあった。

それはつい三ヶ月前に出来た彼氏の話をしてるとき。

"スッゴい優しくて、イケメンでさ。おまけに仕事も出来てさ…"

その彼氏と付き合ってすぐ誘われた飲みの席でまぁ、のろける、のろける。

そりゃ心配にもなった。

あまりにも幸せそうな顔してたから。

奈央もいつかは……って心のどこかで。

けど、彼氏の写真を見せてもらって、その心配はすぐに消えた。

ほんわかとしたその顔。

写真から滲み出る優しさに「この人なら大丈夫か」って思ってた。

「奈央……」
「あんなに好きだって思えたの、初めてだったのに…。」
「………」
「ありえないよ……」

"まさかあの人が……………だったなんて"

電話口で辛そうに話す奈央にかける言葉が見つからなくて、思わず唇をギュッと噛み締めた。

(なんで……なんでよ……)

ポロン、と一粒涙がこぼれる。
真っ白な掛け布団にはそのシミが花みたく広がった。

(なんで、こうも私の周りで……)

ぶつけようのない怒りや憎しみが
胸をジリジリと燃やした。