01 ページ1
進学し、慣れない環境ながらも何とか高校生活に慣れ始めた一年生が終了し、二年の春が始まった。
村山彩希は、学年でもトップの成績を誇る優等生であり、教員たちからも"生徒たちの模範となるような存在"だと褒め称えるほどであった。
生徒会の一員でもある彼女は、正門の前に立ち、他の生徒会の生徒とともに、登校してくる生徒たちに挨拶を掛けるのが毎日の日課であった。
「おはようございます」
「ゆいり、おはよ〜!」
「おはよう、ずんちゃん」
目の前を過ぎ去る生徒たちの中から、彼女に笑顔で歩み寄ってきたのは、同じクラスメイトの山根涼羽。一年次からの友人であり、気兼ねなく話すことができる唯一無二の親友であった。
「今日も朝から大変だね。疲れない?」
「全然。それに疲れたなんて言ってたら、一年の後輩たちに示しがつかないでしょ」
「さすが"優等生"」
「ねえ、それやめてってば。なんか恥ずかしいから・・・」
「ごめんごめん!じゃあ、先に教室で待ってるね!」
笑顔で手を振り、その場を去って行く彼女の背中を見ながら、彩希は一人"優等生"という言葉の意味を考えていた。
自分はただただ真面目に勉強をし、真面目に行いをしてきただけのつもりだった。それが彼女にとっての当たり前であった。だが、周りはそれを褒め称え、"優等生"と呼んだ。初めは嬉しくも感じたが、徐々にそれは常に自分は周りの模範でいなくてはいけないというプレッシャーになりつつあった。
11人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:神楽リュウ | 作成日時:2019年10月17日 7時