strawberry candle (ページ11)

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今日は生憎の大雨

都内全域に警報が出てニュースでは30年ぶりの豪雨とか騒いでる

今日はさすがにA来ないかな…

カーテンを少し開けると窓は滝のような雨に覆われていた

いやに院内は静かだ

小児科の子供たちの声も

面会に来る家族の声も

命の終わりを知らせる機械音さえも聞こえない

ゴロゴロッ＿＿＿＿ピシャッ

雷…か

アイツ、怖がってないといいけど

タッタッタッタッ

ガラガラッ

『りょ、涼介…』

雨でびしょ濡れになった姿のAが病室に飛び込んできた

「え、おま…来たの！？」

『やっぱり来たくてさ笑』

冗談っぽく笑うA

「…雷、怖くねーの？」

『…ん？あ、全然怖くないよ笑』

そう言ってズボンをギュッと握りしめる

「お前、小さいころから変わってねーな笑」

『…え?なにが?』

「嘘つくときの癖、そうやってズボンとかスカートとか握りしめるでしょ?」

『べ、別に嘘つくようなとこ無かったでしょ?』

花瓶の水、変えてくるね

そう言って逃げるように花瓶を持ってAは部屋から出て行った

ここまで素直じゃないことは今までにあったかな…

Aは、大人になっていけばいくほど要らない強がりをしだした

一番最初の強がりは小学２年生の頃

また明日ねって言葉を交わした直後、容態が急変して

俺はICUに運ばれた

約束を破ったまますぎた２週間

２週間が経って再び出会ったAは

俺にわがままを言うことなくたった一言

『Aは、大丈夫だから。ね？』

そういって笑ってみせた

確かあの時もスカートを握りしめてた

Aは優しい嘘をつくことをおぼえたんだ

俺に心配をかけないため

俺に負担をかけないため

俺のために自分を犠牲にして積み重ねられた嘘を…ね