・ ページ16
襖を開けると、ローが部屋の中に座って待っていた。浴衣が部屋の中に広げてある。
母さんに頼んで出しておいてもらった。
「んじゃ、着付けするよ」
父さんの黒い浴衣を手に取って、ローの前に立つ。肌着の上から袖を通して、前を閉めて紐で結んで、それから帯を巻いて完成。
「出来た。サイズも大丈夫そうだね」
「初めて着た」
「そう？ 似合うよ」
形を整えて、少し離れてみてみる。
やっぱ足長いとなんでも似合うんだな。
…へし折りたい。
するとそこへ、母さんが声をかけて入ってきた。
「サイズ、心配してたけど大丈夫だったみたいね」
「…どうも」
「はい、じゃあ男の子は部屋の外に出てちょうだいね！」
母さんがパンっと手を叩いて、ローの背中をぐいぐい押して廊下へ押しやった。
とん、と襖を閉じて、今度はくるりと私の方に振り向く。
「じゃ、髪の毛整えましょうか」
「ありがと母さん」
母さんに髪の毛を丁寧に結えつけてもらって、簪をさしてもらう。
鏡の中の自分を見て、頭の後ろや前髪を確認する。頭を動かすたびに、簪についた飾りがシャランと揺れた。
母さんは器用でなんでも出来ちゃうから凄いや。私、母さんみたいななれる自信ないな。
それから着付けも手伝ってもらった。
おはしょりまでは自分で出来るけど、帯は流石に無理だから。
「出来たわよ。苦しくない？」
「うん、なんとか」
帯を綺麗に結んでもらって、帯締めを整える。
姿見で確認して、皺が寄らないように形を整える。藍色に金魚柄の無難なやつ。でも可愛い。
着付けを終えたら、母さんはスッと襖を静かに開けた。
「はい、お披露目よ」
縁側に座って待っていたローが、それに気づいて振り返る。
すると私を見るなり彼は目を見開いて固まる。
「ふふん、かわいい？」
「…かわいい」
ドヤ顔で浴衣の袖を見せびらかすように上げると、恥ずかしそうに頬を薄く染めて、ぽつりと呟いた。正直でよろしい。…何これ私がナルシストみたい。
「あらあら…ふふふ。
A、うちわ持って行くでしょう？」
母さんが、巾着を手渡しながら、同時にうちわも渡してくれた。
渋い猫がかいてあるやつ。
「うん、ありがと！」
「はい。いってらっしゃい」
「いってきまーす」
母さんの柔らかい微笑みに見送られながら、私はローの手を引いて玄関の方に向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 101人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
弥生(プロフ) - 星蘭さん» ありがとうございますー！ きゅんきゅんしてもらえてめちゃ嬉しいです！ (2021年2月2日 8時) (
レス) id: b916418063 (このIDを非表示/違反報告)
星蘭(プロフ) - めっちゃ面白いです！もうずっと読んでたいくらい！胸きゅんとニヤけが止まりませんでした……。応援してます！ (2021年1月31日 19時) (レス) id: e03eae3599 (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - チョコレートコスモスさん» やったー！ ありがとうございます！ 励みになります…がんばります！！ (2021年1月30日 12時) (レス) id: b916418063 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレートコスモス - イメージの国と花が出てきて設定細かいなって思いました！この作品読んでもっとロー好きになった…というか弥生さんが書くローがめちゃ好き…更新楽しみにしてます！頑張ってください！ (2021年1月29日 0時) (レス) id: 3dca2c4bf3 (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - 架印�靴気�» 確かに九州は本州から離れてるので遠いですね…小さい頃のことってなかなか覚えてないですよね。些細なことは覚えてたりするのに、不思議です笑 (2021年1月27日 15時) (レス) id: b916418063 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：弥生 | 作成日時：2021年1月18日 0時
