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車の中はコーヒーの匂いが染みついていた。
当たり前だ。マキノさんとシャンクスさんは自営業で喫茶店をやっているんだから。
私はコーヒーを飲めないんだけど、コーヒーの淹れ方を教わって、慣れてきたら、二人の店でバイトをしてもいいという提案をしてくれたので、やる気満々だ。
給料という名のお小遣いもくれるそうなので(別にバイトしなくてもあげるよと言われたけど、それは流石に申し訳ないので断った)休みの日に遊びに行ったりとかもできる。
行ってみたい場所がたくさんあるんだ。高校生の時に世界史の資料集で舐めまわすように見てきたいろんな建物や観光地。今から楽しみで仕方ない。
いやー、ドイツって最高の国!
希望に満ち溢れた気持ちで窓の外を眺めていると、可愛い街並みの景色が流れていって、早く散歩にでも行きたいなと気持ちを高ぶらせる。
十分ほど車を走らせると、のんびりした雰囲気の木組みの街が見えてきて、シャンクスさんはある可愛い家の車庫に車を止めた。
ここがマキノさんのお店で、私のホームステイ先。
表にあるウッドデッキにテーブルや椅子が並んでいる、おしゃれな喫茶店。
「わぁ…!」
思わず感嘆の声を漏らしてお店を見つめる。清潔感のある白の外壁にダークウッドの木組みが可愛らしい、オレンジ色の屋根の建物だった。「Café MAKINO」という立て看板が表に置いてある。
夜には地下で「PARTYS BAR」という酒場をやっているらしい。
一階がお店、その上に住まいがあって、看板や、店のドアの上にかかっている金属製の看板がなかったら、普通の家みたいだ。
「かわいい…!」
ぽかんと口を開けたまま、三階建てのその三角屋根の建物を見つめる。
そんな私を見てマキノさん達はまた面白そうに笑っていた。
「気に入った?」
「はい! とっても!」
「ならよかったな。んじゃあ、まぁ長旅で疲れてるだろうし、中に入ってちと休憩するか」
シャンクスさんがそう言ってサラッとキャリーケースを持ってくれた。紳士かこのイケおじ。
そのまま店の中にはいっていく二人をリュックをキュッと握りしめて追いかけるように、私も、ドイツ生活の第一歩を踏み出した。
*
分かる方には分かると思いますが、心がぴょんぴょんする世界のラビットハウス的なあれです。チノちゃんがいる世界線に生まれたい人生でした。
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作者名:弥生 | 作成日時:2020年12月3日 0時