【ONEPIECE】君により【トラファルガー・ロー】 (ページ50)

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結局あの後、目を覚ましたトラファルガーに速攻で寝顔の隠し撮りがバレて軽く小突かれ、そのままミュンヘンまで帰って来た。

レンタカーをお店に返して、二人で夜道を歩いて家まで帰る。

会話がないと、静まり返って、
ガラガラとキャリーケースを転がす音と、時折車が道を通る音以外、何も聞こえない。

でも悪くない静けさだ。
相手がトラファルガーだと言うのもあるだろう。
沈黙が気まずくない友達なんて、ドイツで出来ると思ってなかった。
ナミやビビ、コアラと一緒にいる時みたいで落ち着く。

あたりを、街灯のオレンジ色の光が照らす。
暑かったけど、たまに吹く夜風が、爽やかに頬を滑って涼ませてくれた。

「トラファルガー、ありがとね。私のわがまま聞いてくれて」

唐突にそう声をかけると、トラファルガーはぴたりと足を止めた。
くるりと振り返ると、彼はなんとも言えない表情で私を見つめていた。何か言いたそうだけど、聞いてはいけないような、そうな感じの顔。

もう私の家はすぐそこだ。
ちなみに彼の家はまだもう少し遠くにあるという。

「どうした、急に」

「だって楽しかったから。今回も、夏休みの間も」

にっと笑うと、しばらく固まっていたが、ふっと小さく微笑んで

「俺も、楽しかった」

それだけ言うと、彼はまた歩き始めた。
私もすぐその横に並ぶ。

数分もしないうちに私の家が見えて来た。ので玄関の鍵をポケットから取り出して、前まで来て立ち止まる。

トラファルガーに振り返って、小さく手を振った。

「じゃあね。帰り気をつけてね。おやすみ」

それから、鍵穴に鍵を差し込もうとしたその時

「なぁ、A」

彼の、妙に物静かな声が後ろから降りかかる。

「ん？なに？てか珍しいね。アンタが私の名前呼ぶなんて…」

もしかして初めてなんじゃないか。
今までずっと、おい、とか留学生、とかだったから。

くるりとなんの気無しに振り返ると、彼は意味深な微笑みを優しく浮かべながら私を見下ろしていた。

街灯の暖かな光が、彼の顔を照らして、琥珀色の瞳は光を通して金色に輝いて見える。

さあっと、二人の間に吹いた夜風が、夏の香りを乗せて運んでくる。
ふわり、柔らかく彼の黒髪が揺れた。

どくん、と心臓が大きく跳ねる音が耳に届くのと同時に、

「好きだ」

目尻はくしゃりと緩められ、トラファルガーの唇は、ごく自然にその言葉を紡いだ。