【ONEPIECE】君により【トラファルガー・ロー】 (ページ33)

今日:18 hit、昨日:11 hit、合計:55,018 hit

・ページ33

トラファルガーの目が、悲しそうに揺れる。
さっき鳥肌が立ったのもあり、もう一度へっくしょい、とくしゃみを零した。

すると、微かに肩を揺らして私に手を伸ばそうとしたが、唇を固く結んでその手を引っ込める。

それから、何か言いたそうに口をパクパクとさせていたが、いつまでたっても何も口に出さない。何度かピクリと手を動かしたが、結局はその手も宙ぶらりん。

私も何か声をかけるべきなんだろうけど、助けてくれたって言うのに、意味深な表情のまま突っ立っている彼に、なんて言えばいいかわからなかった。

ちらりと二人の方に目を見やると、ばっちりと目が合う。
彼らも困った顔をして、疑るような、訝しげな眼をトラファルガーに向けたりしていた。
が

「いこう、私の家すぐそこだから、取りあえずお風呂に入って着替えなくちゃ」

「風邪ひいちゃうといけないからね」

二人は飲み終えていたコーヒーのゴミと、握りつぶされた私のジンジャーエールのカップをゴミ箱に入れると、私の手を引いて立ち上がる。

「う、うん…」

手を引かれ、店のテラス席を離れながらも、振り返ってトラファルガーに目を見やる。
俯いたまま、ただその場に立ち尽くしていて、表情は読み取れなかった。

そのままその姿が見えなくなるまで後ろを見ながら歩いていたが、
いつのまにか彼は人ごみの奥に消えてしまった。

・

お風呂から出て、髪の毛を乾かすとジンジャーエールと、それからついでに汗もさっぱり。
ありがとー、とリビングに出ると、二人が心配そうに私に目を見やった。

「災難だったね…A…」

「あはは、そーだねぇ。けど冷たいの浴びてさっぱりって感じ！暑かったから丁度良かったかも！」

へらりと笑って、そう言うと、二人は幾何か曇らせていた表情を緩めた。

「でも、トラファルガー、なんであんなこと言ったのかしら」

「確かに…まるで助けてくれたみたいだったけど、まさか彼がそんなことするとは思えないし…」

二人とも首を傾げて怪訝そうな顔をしてる。

「…あいつそんなに悪いやつじゃないと思うけどなぁ」

「どうして？悪い噂絶えないわよ、彼」

噂。

多分尾ひれがたくさんついたりして、肥大化して伝わってるんだろう。誤解されやすそうな雰囲気してるし、いつもむすっとしてるから顔ちょっと怖いし。
噂なんてそんなもんだ。どの国だってね。

私だって最初はその噂を鵜吞みにして、すんごい避けてたし嫌ってた。