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かちゃん
邪魔しない様に隅の方にコーヒーを置くと、それに気づいたのか、トラファルガーは顔を上げた。
「ああ、あんがと」
ちゃんとお礼言えるんだ…。
偏見だけど、世界が全部自分中心に回ってると思ってそうだと思ってた。
私なんて眼中になくて、ただのおもちゃとして扱ってるんだと。
こんなに冷たく当たってるのに、お礼はちゃんと言ってくれるんだ。
そう感じると、なんか、何も言わずに退散しようとか考えてた自分が恥ずかしくなる。
きゅっとお盆を待つ手に力が入る。
「…ごゆっくり」
ぺこり
頭を小さく下げてそそくさと背を向けてカウンターに戻った。
なんだか顔が見たくなかった。
嫌いだからとか、イライラするからとかじゃなくて、単純に申し訳なく思ってしまったからだ。
まぁそんなのトラファルガーが知る由もない訳だけど。
そんな私を、トラファルガーが見つめていたなんて、全然気づかなかった。
マキノさんがカップを洗っている横にたち、水をきれいに拭き取る。
黙々と作業している私を見つめて、マキノさんは優しく微笑んでいた。
「そうだ、A。倉庫からコーヒー豆取ってくるから、彼にこれ運んでおいて。
それ終わったらもう上がっていいからね〜」
そう言って手渡されたのは、
「ティラミス…？」
コーヒーonコーヒーだけど、いいのか？
てかアイツ、ティラミスなんて頼んでなくない？
そんな質問をする間も無く、マキノさんはニコニコ笑顔で店の奥へと行ってしまった。
取り残された私は、ティラミスを奴に運ぶ以外の仕事も残っておらず、マキノさんの厚意も無下にできないので、渋々ティラミスの皿とフォークをお盆に乗せた。
ひたすらにシャーペンを走らせるトラファルガーの横に、ささっと皿とフォークを置く。
ついでにナプキンも添えて。
それを見たトラファルガーはきょとんとして私を見た。
いつもの余裕ぶっこいた顔でも、冷めた態度でも無く、普通の面食らった顔。
…普通にしてれば友達出来るだろうに。
そう思いながら、いつも擦り寄ってる女の子以外誰ともつるんでるのを見たことがない目の前の男を見つめた。
「頼んでねェ」
「私だって知らないっての。マキノさんが作ってくれたんだから、ありがたく食っとけ」
「俺は甘いモンは食わねェ」
ワガママか！子供じゃないんだからほんとに！
「要らないなら私が食べる」
「太るぞ」
「うっさいわ！」
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作者名：弥生 | 作成日時：2020年12月3日 0時
