【ONEPIECE】君により【トラファルガー・ロー】 (ページ1)

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一話:出発ページ1

ガラガラと大きめサイズのキャリーバッグを転がしながら、綺麗に掃除された空港の床を歩く。
自分の乗る飛行機の航空チケットを失くさないように、すぐに使うのに大事に手に握りながら、慣れない空港にきょろきょろと忙しなく周りを見回す。

親も自分も張り切りすぎて搭乗時刻までまだ三時間もある。

親は最後まで心配してくれたけど、結局は自分の能天気さと、興味を持ったことへの執着心とでごり押しして、とうとうここまで来てしまった。

今から向かうのはドイツ、バイエルン州、ミュンヘン。
半年間の長期語学留学に向かうのだ。
今は六月だから、帰るのは年明けごろになる。正月は家族で一緒に過ごそう、と親や弟と約束した。まぁ時差もあるから多少ずれはあるだろうけど。

費用もかさむし、休学する必要もあるから、親には本当に負担をかけてしまうけど、就職したらちゃんと働いて全額返すつもりだ。両親には感謝してもしきれない。

ドキドキと高鳴る胸に、チケットを持った手を押し当てながら、まるで子供のようにワクワクが抑えられないで、搭乗時刻が来るのを今か今かと待っていた。
さっきからチラチラと数分おきに時計を眺めすぎて、そわそわしているのがまるわかり。

周りを行き交う人たちは、休みを利用して旅行に行く人や、国際的な仕事をするために飛行機をよく利用するような、キャリアな大人の人たちなどなど、人それぞれだ。

母さんに持たせてもらった、耳がキーンとなった時用の飴玉が、ズボンのポケットの中でかさりと音を立てた。

興奮冷めやらぬ心を落ち着かせようと、そのうちの一つを取り出す。
私の好きなオレンジ味だ。包み紙を剥がして、口の中に放り込み、オレンジ色の包み紙は丁寧に畳んでもう片方のポケットに突っ込んだ。

ころころと口の中でオレンジ味の飴玉を転がしていると、昔、親が箱買いしたみかんを一日で二十個くらい食べてしまって軽く叱られたのを思い出す。

「姉貴！俺の分まで食うなよ！」

そばかすを頬に浮かべた眼付きの悪い弟の顔が浮かんで、ふふふと思わず口許を緩めた。
元気かなぁ、エース。お友達のサボくんと、近所のルフィくんとよく三人で遊んでいたけど、私がいなくて寂しくないかな。

今になって家族のことが思い起こされて、いろいろ思い出が浮かんでくる。別に今生の別れでもないだろうに。

そうこうしているうちに、あっという間に搭乗時刻がやってきた。