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「僕らの生きるこの世界は普通じゃない。
呪術師は常に死と隣り合わせ。どんなにAが自分の信条を守ろうと、動けなくなったら、死んでしまったら、Aが救えるはずだった人間も死んでしまう。それを言い訳になんかできない。
もしAがそれを全うしたとしても、今のAじゃ君を邪魔に思う上層部に捻じ伏せられて、消されるのがオチってとこだ。
だからA。Aが信じる正しさを突き通せる世界にしたいのなら。
この呪術界に変革を起こしたいのならば。
……僕に置いて行かれないくらい、強くなってよ」
こんな弱い呪いの戯言なんかに振り回されんなよ。
その藍に、絶望の色を浮かばせんな。
もうあんな目、見たくない。
思わず力んだAの腕を掴む手に、Aは顔を歪めて。
それでも、Aはその潤んだ藍色で僕を見つめて。
「……ごめんなさい。」
ただ一言、腕の中の少女が言った。
いつもなら俯く彼女が一度も下を向くことなく、僕を真っ直ぐ見据えていた。
その藍色の奥に、燃えるような熱を灯して。
「五条先生、」
彼女が僕の名前を呼んだ。
昔は悟、なんて呼んでたクセに、いつしか僕を下の名で呼ばなくなった。
それは、僕が彼女を突き放したからで、彼女がそれを、理解したから。
僕に甘えるな、頼るな、という言葉を素直に聞き入れて、彼女は僕と距離を置いた。
「私は、強くなります。
呪いにも、誰にも負けないくらい、五条先生にだって。
今すぐは無理かもしれないけれど、五条先生が生かしてくれたから。
私は、いなくなったりしません」
もう片方の手で、Aが僕の頬に触れた。
「_________っ、」
「なんで私を叱ってる五条先生が、そんな泣きそうな顔してるんですか……」
その瞳に浮かべた涙が、零れることはなかった。
代わりに、困ったように笑うAがいて。
儚くて。
今にも消えてしまいそうで。
自然と近づく顔に、Aが目を丸くしたけれど。
それを止めることはできなかった。
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早瀬モモコ(プロフ) - リリリンゴさん» リリリンゴさんコメントありがとうございます!とても励みになります!更新頑張りますのでこれからもよろしくお願いします!! (2021年10月16日 21時) (レス) id: 8442258d5b (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年10月13日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
リリリンゴ - シリーズ最初から読みました!面白いです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年10月13日 2時) (レス) @page6 id: 5191a43a7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:早瀬モモコ | 作成日時:2021年10月12日 1時