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「五条先生……、っ!」
病院の中を小走りに行くと、五条先生が廊下の壁に背を預けて腕を組んで私を待っていた。
いや、待ち構えていたのかもしれない。
「こっち」
緊張しながら駆け寄った私の腕を、五条先生が乱暴に掴んで。
そのままその後ろの空室に引きずり込まれた。
さっきよりも強めに閉まった扉が、耳元で音を立てた。
「_________え、」
目前に、見慣れた真っ黒の景色。
丁度五条先生の胸の位置。
掴まれた腕がそのまま壁に張り付けられて、五条先生のもう片方の手は私の顔の真横にあった。
五条先生と壁に挟まれて身動きが取れない。
突然過ぎて、何でこうなっているのかわからない脳みそを必死に回転させながら、私は目の前の五条先生の真っ黒の服を見つめた。
「ねえ、僕いつも言ってるよね」
いつも私を叱る声色よりも低い声が頭上から響いた。
背中を冷たい汗が伝って、口が乾いて。
ようやく飲み込んだ唾が、音を立てて喉を通り過ぎた。
「……。」
「黙ってないでさ、それ、何なの?」
それ、なんて曖昧な表現じゃわからない。
でも五条先生の顔が目の前まで迫って。
真っ黒の目隠し越しに目が合ったら、思考も停止してしまう。
「何って、なにがですか」
「僕の
「っ、」
押し上げられた黒布の下から、透き通るような蒼が私を見た。
全て見透かされて、暴かれる私の中の醜い呪いに、蒼が怒りの色を漂わせていた。
「呪霊は祓えって、何度も言ってるでしょ」
「わかってます」
「そんな青い顔して何がわかってるって?それとも何?また僕に助けてもらおうなんて魂胆なの?」
「違う」
「何が違うの?」
冷たい蒼が見下ろす。
その中の澱んだ藍色が不格好に映り込んだ。
……嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。
こんな弱い私を、その綺麗な蒼い瞳に映さないで。
「呪霊が……呪いが呪いでしか祓えないのは、どうしてですか」
「は?」
「呪術師は……呪いを祓うのが仕事で。五条先生も、私が呪いを祓うことを望んでて。
そんなことは、私にだってわかってるんです。
わかってるけど……私にはできなかった。
声が、聴こえるんです。
人々の、切実な願いが、想いが、期待が……
どうしてなんですか。
願ったのは人でしょ。
私たちが、ただ純粋に強く願った。それだけなのに……
どうしてそれを、蔑ろにするんですか」
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早瀬モモコ(プロフ) - リリリンゴさん» リリリンゴさんコメントありがとうございます!とても励みになります!更新頑張りますのでこれからもよろしくお願いします!! (2021年10月16日 21時) (レス) id: 8442258d5b (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年10月13日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
リリリンゴ - シリーズ最初から読みました!面白いです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年10月13日 2時) (レス) @page6 id: 5191a43a7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:早瀬モモコ | 作成日時:2021年10月12日 1時