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「そろそろ決断できた頃かな」
五条先生がスマホで時間を確認して、そう言った。
「恵は?いつ退院できるんだっけ?」
「検査は終わったので、とりあえずこの点滴が終われば退院できます。
あとは高専に帰って家入さんの治療を受けます」
「そ。じゃあ僕は先に虎杖悠仁のところに行くから。杉沢火葬場ね」
そっか。自分のことでいっぱいいっぱいだったけど、虎杖悠仁のお爺さん亡くなったんだった。
「ハイ」
「分かりました」
五条先生が私たちに背を向けて病室を後にしようとして、扉のところで立ち止まった。
「Aは僕と一緒にきて」
五条先生は振り返らずにそう言い捨てて、病室を出て行った。
ピシャリ、と音を立てて閉まる扉が、今の言葉との矛盾を生んだ。
「は、」
今、一緒に来いって言ったよね?
そう言っといて置いて行かれたんだけど。
さっきまで飄々と喋っていたのに、急に……
「千尋。お前なんかあっただろ」
伏黒恵が五条先生の出て行った扉を呆然として眺める私に言った。
「……別に、何もない」
「んなわけないだろ。じゃなきゃ……五条先生あれ、怒ってるぞ」
そんなのは、言われなくたってわかってる。
五条先生はいつも、私に厳しい。
「_________お前あの時、術式使ったか?」
あの時。
恐らくラグビー場にいた呪霊と対峙した時のことだ。
答えは、使った、が正しい。
でもうまくできなかった。
そこから虎杖悠仁の肉体を乗っ取った宿儺に首を掴まれるまで気絶していたけど、たぶん虎杖悠仁が指を飲んだのは私が失敗したからだ。
全部私のせい。
五条先生は、何に怒ってる?
術式使ったから?失敗したから?
虎杖悠仁を巻き込んでしまったから?
それとも、『罰』を使ったこと?
思い当たる節がありすぎて。
また、弱い私に失望してしまったのだろうか。
「……。」
「とにかく、五条先生追いかけろ」
「……わかってる」
黙り込んだ私に、伏黒恵が言った。
お説教はこれまで何度もされたけれど、あんな怒り方する五条先生は初めて見た。
重たい足を、ゆっくりと引きずって。
病室に伏黒恵を残して、私は五条先生の後を追った。
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早瀬モモコ(プロフ) - リリリンゴさん» リリリンゴさんコメントありがとうございます!とても励みになります!更新頑張りますのでこれからもよろしくお願いします!! (2021年10月16日 21時) (レス) id: 8442258d5b (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年10月13日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
リリリンゴ - シリーズ最初から読みました!面白いです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年10月13日 2時) (レス) @page6 id: 5191a43a7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:早瀬モモコ | 作成日時:2021年10月12日 1時