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(なんで俺、手なんか握ってんだよ)
俺が握ったのか、千尋が握ったのか。
……位置的に恐らく俺だ。なんで。
恥ずかしすぎて死にそうだった。
そんなことは露知らず、千尋は長い藍色の髪を乱雑に垂らしながら俺のベッドの縁でつっぷつしていた。
顔面をめり込ませ、首だけで体を支えているような恰好で眠る千尋の顔はもちろん見えない。
その体制キツくないか……?
躊躇しながらも、仕方なしに触れた手を軽く叩いて声を掛ける。
「……おい、千尋。」
まったく反応がない。
え、まさか死んでないよな。
「おい、起きろ。寝るんならちゃんと……」
あれ。
「……千尋?」
つっぷつした背中が、上下していない。
は?
「おいっ!千尋!起きろ!」
「_________ぬあっ」
「……。」
なんだ、その。
「……そのだらし無い涎どうにかしろ。」
「あ、う?」
飛び起きた千尋が慌てて口を押さえて、そして立ち上がった。
「あ、あれ?」
「あれ?じゃねえ。とにかく拭いて来い」
「……あい」
大きな藍色がぱちぱちと瞬きし、血色の悪い真っ白の肌をほんの少し赤く染めながら、千尋がバタバタとあの甘い香りを残して駆けてゆく。
ズキズキと頭が痛んだ。
これは、傷のせいか、あの藍色のせいか。
最悪だ。
俺、あんな奴を?
何なんだもう……本当勘弁してくれ。
もう一度寝よう。
寝て、忘れてしまおう。
そう思って、布団を頭までかぶって目を閉じた。
が。
病室の扉が勢いよく開いた。
何なんだよマジで。
「恵ー!生きてるー?」
よし、寝よう。
そう決めて、五条先生の呼ぶ声を無視した。
「Aー、恵寝てるけど?」
「さっきまで起きてました。伏黒恵って早寝の天才?」
「……(うざ)。」
俺のベッドで涎垂らしながら寝こけてた奴に言われたくない。
渋々と布団を持ち上げ起き上がる。
「……狸寝入り」
イラ。
「お、Aのくせに難しい言葉知ってんじゃん」
イライラ。
「怪我、大丈夫ですか」
「……今のこの状況でそれ言えるオマエ凄いな」
「?」
「ま、大したこと無さ気だし。
にしてもヤラレタね〜、それ宿儺相手じゃないでしょ?雑魚に叩かれるなんて、先生悲しい」
五条先生が目隠しの上から鳴き真似をするが、一々反応してたら切りがない。もう何も気に留めない様にしよう。
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早瀬モモコ(プロフ) - リリリンゴさん» リリリンゴさんコメントありがとうございます!とても励みになります!更新頑張りますのでこれからもよろしくお願いします!! (2021年10月16日 21時) (レス) id: 8442258d5b (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年10月13日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
リリリンゴ - シリーズ最初から読みました!面白いです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年10月13日 2時) (レス) @page6 id: 5191a43a7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:早瀬モモコ | 作成日時:2021年10月12日 1時