キミとサクマのいない時間《Before A days》

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「や、めてください……」






うまい切り返しなんて分からないから


精一杯顔を背けてみる。






……こんな状況なのに、






ギュっと目を瞑ってスカートを握りしめる。









照「……、ふふっ(笑)」







照さんの笑う声が聞こえて


髪を撫でた指が離れてった





顔をあげてみたら



おかしそうに口元を隠してる照さん、









「え……？」





照「……いや、めっちゃ顔そっぽ向くからさ(笑)」



「だ、だって、」







あのままじゃキスされそうで


なんて思いあがったこと、絶対言えないけど








照「ガチガチに拒否されてさすがにへこんだからやめた(笑)」



「……イジワルしないで」






ケラケラ笑ってるの見たら、



不純な妄想したアタシの方が、なんか





ヤラしいみたいじゃない……







そう思ったら身体が急に火照ってきて、顔を仰ぐ。








照「……いい顔してんじゃん」



「えっ？」






カウンターに頬杖をついた照さんは、

さっきとは違って優しく笑ってて





照「一応、口説いてんのに泣きそうな顔してたからさ、

　……よっぽど、好きな男でもいるのかなって」






「……」









あぁ、やっぱりそっか。




バレバレだよね。








だって、イケメンに迫られてるって状況なのに



全然、ドキドキできなかった。









……ずっと『アイツ』の顔ばかり浮かんで









『Aは俺のなのに！』ってほっぺ膨らませてくれるかな


『Aが浮気した……』ってイジけてくれるかな








そんな、想像ばかりして。









「ダメだ、アタシ……」









どうして、『思い出さない』なんて考えたんだろう





無理だよ、




そんなの。









大好きな名前を忘れるなんて








包んでくれた温もりを知らなかったフリするなんて









『愛してる』って恥ずかしそうに言ってくれた




あの7日間の全部、なかったことになんて







できる訳ないのに……っ









「サクマ……、会いたい……っ」






照「……いっぱい泣いていいよ、

　今日、この席はA専用にしてやる」








しゃくりあげるアタシの頭に


ぽん、と乗っかる照さんの手は優しくて





なのに、違うって思うアタシはわがままで









でも、1人で泣くのはもう、限界で







大きな手の下に隠れて、


溢れ出る思いの分だけ声をあげて泣いた。

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