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「どうも」
「おや、今回は私が待たれていた方かな」
と仕事中ずっと上の方から見ていたその人の側に行き話しかける
「夏油さん?でいいのかな」
「調べたんだね」
「調べさせたんでしょ、わざとらしく悟さんの名前言ってさ」
と言えば何も言わずに楽しそうに笑う夏油さん、なにがそんなに楽しいんだかこっちは取り乱してしまって大変だったというのに
「どうせあの書類を私に読ませるために言ったんでしょ」
「さぁ、何のことだろう?」
「嘘くさっ」
「全部は読んでないみたいだね、残念だ」
と嘘っぽい悲しそうな顔を向けてくるその人に嫌気がさす
「読めば全てわかったのに君は相当な馬鹿らしい」
「…似てるわ、やっぱ似てるわ、流石同期っていうの?人をイラつかせる天才」
と言えばどこか懐かしんだ様に笑う夏油さん
根は良い人なんだろうな、苦労ばっかりしただけで、善人過ぎたのかも
「呪術師向いてないんだね」
「君に言われるのは驚きだな」
「…、ねぇ高専の事嫌いなの?」
「どうだろうね」
とあいまいな返事しかしてくれない夏油さん、まぁちゃんとした返事をしてくれると思ってなかったけど
「好きなんだね、高専の皆は」
「私は何も言ってないが?」
「私の勘」
「そう言ってる君はどうなんだい」
と言われ目を逸らし前を見据えた
綺麗な空、悟さんの瞳の色
誰かが育てた紫陽花、棘の瞳の色
「好きな人もいれば嫌いな人もいる、そんなもんじゃない?」
「君は本当に不安定な存在だ、掴み所がない」
なんて言いニンマリと笑う彼の笑みに背筋がゾッとする
楽しそうに笑いながら忌々しい呪霊を纏う彼、今すぐにでも逃げ出したい
「全てを知った君がどう転ぶか、私は楽しみにしとくよ」
と言い残し何処かへと去って行ってしまう
私からしたら彼の方が不安定な存在だ
優しさを押し殺せないけど憎い奴は憎い、そう言ってるように見えちゃう
多分、本当に酷い奴はあそこまで色々と考えてない、ただ憎いそれだけで動く
わざわざ悪人ですとレッテルを貼って来ない、静かに、音を立てず、蝕む
「…生殺与奪の権は我にあり、なんてね」
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作者名:天音 | 作成日時:2021年1月9日 19時