君の願いを叶えてあげる２【BTS】[完]

９ｰ１３,お節介 ページ30

目を開けると、私は美雅の家の玄関にいた。



いつの間にか開いていた扉と、手のひらの上の2つに割れた黄色い宝石。



……願いが叶ったのだ。





『っ！美雅！！』





一刻を争う状況だったことを思い出し、私は靴を脱ぐことも忘れて美雅の姿を探す。


最悪の事態を想像して身体が震えたが、それでも足を止めることはしなかった。


階段を上ると、奥の部屋の扉が開いていることに気がつく。


直感でそこに彼女がいると感じた私は、1秒でも早くと願いながら走った。





『美雅！！』


美雅｢っ………来ないで！！｣





そこには、青ざめた顔をしながら包丁を握る美雅の姿があった。





『あんた何して…！』


美雅｢もういいの…！私のことなんて誰も求めてない！！誰も見てくれない！！
先生も、友達も、お父さんも、お母さんも…！｣


『っ…』


美雅｢私がいなくなったって誰も何も思わない…！死んでやる！！今すぐ死んでやる！！｣





我を忘れた彼女は、そう叫んで包丁の刃先を自分の首に向ける。


段々と荒くなっていく呼吸、流れる汗。


今にもそれを行動に移してしまいそうな彼女を前に、なりふり構っている余裕など無かった。





ｷﾞｭｯ…





美雅｢っ…｣





気づくと体が彼女の方へと動いていて、刃先を左手で遠ざけながら抱きしめる。


細くて、震えていて、今にも壊れてしまいそうな彼女。





『……私は、美雅のことちゃんと見てる』





そう一言だけ伝えると、彼女は全身の緊張が解けたように私に寄りかかって、声を上げて泣いた。





私は彼女の事が嫌いだ。


憎くて怖くて、大嫌いだ。





でも、“好き”の反対は“嫌い”じゃない。





“無関心”。





彼女にずっと必要だったのは、身近な人からの“関心”だったんだと思う。


ーーーーーーーーーーーー


私を突き落とした事がわざとでは無かったと証明され退学を免れた美雅だったが、


彼女は自ら学校をやめた。


あれだけ色々な事があったのだから、無理もない。


私も、これ以上お節介を焼くようなことはしなかった。





美雅が学校を辞めて数日後。


いつものように登校して下駄箱を開けると、小さな箱が入っていた。


中を開けると、チョコレートとメッセージカードが。





“ありがとう”





私はそれを確認して、そっと鞄の中にしまう。





『ふふっ』


彩｢どうしたのー？ニヤケちゃって。｣


『なんでもなーい』





…お節介も悪くないかもしれない。

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