ふたり繋いだ ページ9
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｢あれって、AAじゃね？｣
｢まじ！？これからお楽しみかよ。隣のやついいなー。｣
｢次相手してもらう！？｣
初めて歩く街路樹。すれ違った二人の他校の男子生徒が、通りすがりにそう話している声が聞こえた。
僕の左隣を歩くAちゃんを横目に見ると、悲しそうな表情で下を向いて、鞄を持つ手が少し震えている。
声を掛けるべきか、それとも掛けないべきか。自分の気持ち的には前者だけど、でもAちゃんを思うと触れない方がいいのかなとも思い中々踏み出せない。
そして自然と続いた沈黙を破ったのは、Aちゃんだった。
『ごめん、ね？私と歩いてると、北ちゃんまで変な目で見られちゃうね。』
｢あ、いや…、僕は気にしないけど…。｣
『えー？気にするよ、普通。私くらいだよ？気にしないのなんて。あ、壱馬達もかな。』
きっとAちゃんは笑ってるつもりなんだろうけど、僕には泣いてるようにしか見えなかった。
気にしないなんて、嘘だよね。本当は辛くて悲しくて苦しいんでしょ？いつもニコニコして平然を装っているだけで、心の中では助けてって叫んでる。
歩く足を止めた僕の顔を、どうしたの？とまた下手くそな笑顔で覗き込む。
僕なんかが踏み込んでいいのか分からない。でも、無性に応えたくなったんだ。Aちゃんの、その心の叫びに。
｢平気なわけ、ないよね。｣
『…え、？』
｢会ったことも、話したこともない、誰なのかも分からない人達にあんな風に言われて、平気なわけない。｣
『そんなことないよ、私は全然、』
｢もし本当にそうだっていうなら、そんなこと、平気になんかなっちゃだめだよ。｣
『っ、！』
彼女の大きな瞳から流れた涙が、今までどれほど辛く苦しかったかを物語っていた。
みるみるうちに嘘の笑顔が本物の泣き顔に変わり、Aちゃんは小さく心の悲鳴を口にした。
『なん、で？何もしてないのに、っ！寝取った…？壱馬達ともそういう関係…？意味分かんないよっ、そんなこと、するわけないじゃん…っ！』
｢…全部、噂は全部、嘘なんだね。｣
『でも、誰も信じてくれないもん、っ！今までだってそうだった、誰も、っ』
｢僕は…Aちゃんを信じる。｣
『っ、え、？』
泣きながらそう訴えたAちゃんの腕を掴み、僕は来た道を急いで引き返した。小さくしか見えなくなった、さっきの他校の生徒に向かって。
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作者名：noa | 作成日時：2021年2月22日 17時
