今 目の前に ページ5
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声の方を向くと、咄嗟に出してしまった声に自分で驚きながら口元を手で押える長谷川くんと目が合った。
小さく"まじか"という藤原くんと、無言で真っ直ぐ俺を見る川村くんとも目が合い、ただ名前を言っただけなのになぜだろうと変な汗が出てくる。
唯一の救いだったのは、Aさんだけは下を向いたままだということ。結局その後何も言えず、宜しくお願いしますとだけ最後に添えて着席した。
「ちょっと北ちゃん、さっきの何!?早速目付けられてんじゃん!」
「やめてよ、変な言い方すんの。」
「もしかしてAさん転ばせたの北ちゃんだと思われてる、とかだったらやばいよね…。」
「やばいって、そんな怖い人には見えないけど、長谷川くん。」
帰りのホームルームが終わった途端、今朝と同じように俺の腕を掴み急いで教室から出た翔吾は、焦った様子でそう話してきた。
確かにあの長谷川くんの反応は不思議だったけど、でも何かしようって感じでもなかったし、翔吾が心配しているようなことはないと思うんだけど。
慎「あのー…吉野、くん?」
廊下でそんな話をしていた時、教室から出てきた長谷川くんに声を掛けられた。周りにはAさん含め他の三人も一緒で。
「…あ、はい、」
慎「えっとー…、さっきはごめんね、俺もびっくりした!」
「え、?」
樹「いやいや、なんで本人がびっくりしてんの。」
慎「だよね、確かに。あ、俺長谷川慎。慎でもまこっちゃんでもいいから!よろしくね!吉野くんは?なんて呼ばれてんの?」
「あ、えっと、大体北人か北ちゃん、かな。」
慎「じゃあー…俺は北ちゃんにしよ。あ、こっちは樹。樹もそのままか、それかAと同じでいっちゃんでいいんじゃない?」
樹「全然いいんだけど、なんで急に仕切ってんの?」
なんだろう、これ。なんでキラキラしてるこの人達が僕なんかに?
ちゃっかり翔吾もじゃあ俺も!と距離縮めてるし、どう考えても、誰が見ても異様な光景。
慎「壱馬はー…、壱馬だね。」
壱「ん、まあなんでも。」
慎「で、AもAでいいよね!」
『あ、うん。なんでも、いいです。』
「壱馬と、A…ちゃん。あ、あんまり女の子呼び捨てにしたことなくて、」
『ぜ、全然!本当になんでも大丈夫だから。』
慎「ってことで、明日からもよろしくね、北ちゃん。」
余りにも突然のことに、彼等が去った後もしばらく僕達はその場を動けなかった。
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作者名:noa | 作成日時:2021年2月22日 17時