それだけが僕の願い ページ33
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｢昨日のことも、慎に聞いたよ。｣
美｢…そう。｣
｢まあ、そんなこといいんだけど、話したいことっていうのは、｣
美｢先に私からいい？｣
｢え？…いいけど、｣
話したいことがあるのは自分だけだと思ってたからちょっとびっくりした。
昨日のことを謝りたいとか、そういうことなんだろうか。別にそのことがあって終わらせようと思ったわけじゃないから、変に謝られて言いづらい雰囲気になるのだけは嫌だった。
美｢もう終わりにしない？｣
｢…え？｣
美｢ていうか、終わりにしたい。別れてください。｣
｢いや、ちょっと待って、｣
美｢ごめん、何言われても私の気持ちは変わんない。｣
いや、そうじゃなくて。ちょっと待ってはそういう意味じゃない。まさかの展開過ぎてつい出てしまった言葉なだけ。
けどまあ、言う手間が省けたと言えば省けたわけだ。こんな関係でも一応恋人同士で、自ら終わりたいと告げるのは気持ちの良いものでもないし。
｢分かった。｣
美｢…じゃあ、そういうことだから。私行くね。｣
｢ねえ。いつから思ってた？その、別れたいって。｣
美｢分かんない。けど、北人さ、付き合ってても楽しそうじゃないし、私もつまんなかったから。｣
｢…あ、そう。｣
美｢じゃあ、ね。｣
話したいことがあって待ってた僕の話を聞こうともせず、足早にその場を去っていった美咲の後ろ姿を見て、今までありがとうだなんて言葉は全く出てこなかった。
楽しそうじゃない？つまんなかった？何言ってんだよ。そもそもそんな風に感じる時間を作ったりしなかったくせに。
公言しない、学校では関わらない、近くじゃ会わない、休みの日だってほんの数回しか出掛けないで、どう楽しませれば良かったというんだろう。
言いにくいことだなんて思った自分が馬鹿みたいだ。なんで僕が振られなきゃならないのかと、腹立だしささえ覚えた。
｢…ま、もういいや。｣
帰り道、色々考えたけどもうなんだか疲れてしまって、とりあえず終わりに出来たからそれで良いと思うことにした。
心配してくれた翔吾や壱馬達に、向こうから切り出されて事が済んだとLINEで伝えると、文面から僕以上に怒ってくれているのを感じた。
問題はこれから、か。身軽になると何故か早くAちゃん気持ちを伝えなきゃという気になる。でも、そうするにはまだ早いのかな。
もう少し知ってもらってからじゃないと、駄目なんだろうか。
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作者名：noa | 作成日時：2021年2月22日 17時
