その眼差しが ページ22
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北｢ごめんね、呼び出しちゃって。｣
｢いや、ええよ。｣
昼休み、北人から話したいことがあると屋上に呼び出された。
北人の顔付きはどこか覚悟を決めたような凛々しさがあって、どことなく緊張が走る。
北｢知ってたんだね、僕に彼女いるって。今朝翔吾から聞いた。｣
｢あー、…うん。けどあいつ責めんでやって。ほんま、話の流れっつーかなんか、言わざるを得ん状況やったからさ。｣
北｢うん、分かってる。｣
｢言わんで悪かったな。｣
北｢ううん。｣
沈黙が続く。わざわざ呼び出してまで話したかったことがこれじゃないことは流石に明確で。
｢で？それじゃないやろ、話って。｣
北｢…うん。｣
｢なんやねん、はよ言わんと昼休み終わるって。｣
北｢…僕、Aちゃんのことが好き。…って気付いた。だから、もちろんちゃんと今を終わりにして、それでもっとAちゃんに僕のこと知ってもらったら、伝えようと思ってる。｣
｢ん、そっか。…頑張れよ、応援してるわ。｣
北｢壱馬は？｣
｢なにが？｣
北｢壱馬も好きなんだよね、Aちゃんのこと。｣
｢俺は、…まあ、好き言うてもそういうんやないから。｣
そう言って笑って誤魔化したけど、北人の顔は真剣で、本当は自分と同じ好きだと分かっているのだと思った。
でも、俺はもう言うつもりはない。Aが北人を好きだと言った日から、いや、もっと前からもうこのままの関係でいることを望んだ。
北｢それで、いいの？｣
｢だから、｣
北｢もし僕が、Aちゃんと付き合えたとして、…それで壱馬は後悔しない？｣
｢っ、｣
北｢僕ならきっと、後悔する。｣
｢…人の心配とか、えらい余裕やな。｣
北｢余裕なんか、ないよ。正直壱馬の方がAちゃんのこと幸せに出来るんじゃないかって、そう思う自分もいる。｣
｢なんやそれ、｣
北｢けど、幸せにしたいって気持ちは、負けない。｣
｢っ、…そんなん、俺やって負けるわけないやろ。｣
北人からの宣戦布告とも言える言葉に、今の今までAの恋が実るならそれでいいと思って気持ちがつい揺らいでしまった。
昨日今日あいつを好きになった奴に、負けて溜まるかってんだよ。
そんな俺の返事を聞いて、北人少し嬉しそうに微笑み、今日からライバルだね、と言って屋上を後にした。
俺ん中じゃとっくにライバルやったけどな。
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作者名：noa | 作成日時：2021年2月22日 17時
