見る君の ページ21
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慎「頑張れ、か…。」
俺、最低なことしたかな。
北ちゃんに彼女がいるの知っててAの背中押すようなことして、一人になると間違ってるよなって痛感する。
樹「ごめんごめん、お待たせ!」
壱「…ねんむ。あれ、Aは?」
慎「あー、今日は別。」
壱「別?なんで?」
慎「…北ちゃんとこ、行った。」
樹「Aが?一人で?」
不思議そうにする樹の横で、眠そうな目を擦りながらも俺を見据える壱馬の視線に耐えきれず、つい下を向いた。
昨日あんだけ言われて、俺が行かせたなんて知ったら、きっと怒るよな。
壱「どーせ慎が言うたんやろ、行ってこいって。」
樹「は!?え、なんで?だって北ちゃん彼女いんだよ?」
慎「それは、分かってるけど…。でも、やっとじゃん。やっと一歩進めたのにさ、」
樹「そうだけど、このまま進んだって余計苦しいだけじゃん。ちょっと俺、行ってくるよ。」
壱「別にええんちゃう?」
慎「…え?」
樹「壱馬まで何言ってんの!?本気!?」
壱「まあ、当たって砕けろっちゅーことよ。」
まさか壱馬がそんなこと言うなんて、意外だった。絶対、絶対絶対に怒ると思ってたのに。
結局納得いかない様子の樹をなんとか説得して学校に向かうと、既に教室にはAの姿が。
朝会った時とは打って変わって、スッキリした表情のAを見て、ホッと胸を撫で下ろした。
『あ、おはよ!…まこっちゃん、さっきはありがとう。』
慎「ううん、行ってよかったでしょ?」
『うん!』
壱「なんや、えらい嬉しそうやん。」
『え!?べ、別にそんなことないけど、』
樹「その顔で何言ってんだか。」
『だから、何もないってば!』
慎「じゃあ北ちゃん来たら本人に聞こーっと。」
『ちょ、やめてよ!』
いつぶりだろう、こんな普通に笑ったり怒ったりするAを見たの。
いつも周りばっか気にして、俺達の影に隠れて過ごしてたAを、"北ちゃん"という存在がここまで変えてしまうなんて、なんか嬉しい反面ちょっと悔しかったりもして。
でも、Aが笑顔でいられるならなんだっていいんだ。
壱「ほんま、分っかりやすいやつ。」
俺はAのこと、そういう意味で好きだとか思ったことはなくて、それはこれからもずっと変わらないと思う。樹もきっと俺と同じ。
でも、壱馬は。
壱馬のAを見る目が俺らと違うのは、もう大分前に気付いてた。
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作者名:noa | 作成日時:2021年2月22日 17時