My prayer ページ19
.
『痛い、よね。』
｢っ、！…ううん、大丈夫だよ。｣
『大丈夫じゃ、ないよ。本当に、ごめんなさい。』
Aちゃんの白くて細い指先が頬の傷に触れた瞬間から、どんどん顔に熱を帯びてくるのが分かる。痛かったはずなのに、それすら感じれなくなるくらい顔が熱い。
優しく傷に触れながら、今にも泣き出してしまいそうな顔でそう呟く姿を見て、僕は思ったんだ。もしかしたら僕は、この子を好きになってしまったのかもしれないって。
なぜか無性に僕も触れたくなって、少し震えるAちゃんの手にそっと自分の手を重ねたまま、顔から下ろしてきゅっと握った。
『っ、』
｢本当に、平気。だからもう気にしないで？｣
『でも…』
｢気にされてる方が嫌だからさ。それに、Aちゃんのせいじゃないよ。僕がそうしたくてやったことだから。｣
『ごめ、』
｢あと、謝るのももう無し。ね？｣
『…はい。ありがとう、北ちゃん。』
僕の手をきゅっと握り返したAちゃんは、はにかんだような表情でそう言った。
決して笑顔ではないけど、安心したような顔付きに、僕もホッと胸を撫で下ろした。ほんの少しだけでも、Aちゃんの中の申し訳なさがなくなってくれてたらいいな。
翔｢あのー…、俺いるの、忘れてない？｣
『あ、忘れてた！』
翔｢そんなはっきり言わなくても、｣
『違くて、日直！私今日、日直だった…』
｢じゃあ急がないと間に合わなくなるね。｣
『そうだね、じゃあ私、先に行くね？』
｢分かった、気を付けてね。｣
僕達の学校では、その日の日直は朝職員室へ日誌を取りに行き、教室の換気や整備をする決まりがある。
半分忘れかけてた翔吾の言葉に慌てたと思ったら、今度は急に黙り固まるAちゃん。俯き加減の目線の先には、僕達の繋がれた手。ずっと握ったままだったことに自分でもびっくりした。
何とも言えない名残惜しさを感じながらも握る手を緩める。でも、なぜか握られてる手の力は緩くならない。
『…なんか、寂しくなっちゃう、かも。』
｢え、？｣
『北ちゃんの手、こうして繋いでると落ち着くから、離れると寂しくなるなって。』
｢っ、…いつでも、繋いでいいよ。｣
繋がれていない方の手で、Aちゃんの頭にポン、と手を置きそう伝えると、恥ずかしそうな顔をしながら、じゃあ後でね、と言って走って行った。
今の僕の感情を言葉で表すとしたらきっと、"愛おしい"だと思う。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 364人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：noa | 作成日時：2021年2月22日 17時
