それだけが僕の願い ページ18
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朝起きてからも、昨日の北ちゃんの姿が頭から離れない。私の為に、北ちゃんがあんな風に怒ってくれる日がくるなんて思ってもなかった。
慎「おはよ、A。壱馬達、もう少し待ってだって。」
『…まこっちゃん、おはよう。そっか、分かった。』
慎「もー、元気ないなあ。北ちゃんのこと、気になってんでしょ。」
『だって、私のせいで怪我までさせて、気にするなって言う方が無理だよ。今日だって、学校来れるのかな…。』
慎「…なら、行ってみれば?」
『どこに、』
慎「北ちゃんのとこ。今から行けば、途中で会えるんじゃない?」
『む、無理だよ!そんなの!』
だって、昨日あれだけ迷惑を掛けられた人に朝っぱらから絶対会いたくない。
気にはなるし、直接ちゃんと謝りたいけど、でも一人でなんて行く勇気ない。もし拒絶されたら、もう一生立ち直れないもん。
慎「そこまで気になってんのに?」
『…じゃ、じゃあみんなで、』
慎「Aさ、試しに自分の力で動いてみたら?」
『え、?』
慎「北ちゃんのこと、本当に好きなんでしょ?…ならちゃんと、自分の力でぶつからないと。」
『でも、っ。』
慎「大丈夫。北ちゃんはきっと、いや絶対に迷惑だなんて思ってないから。寧ろ余計なことしたかなって、逆に心配してるかもよ。」
『っ、私、行ってくる!』
慎「ん、頑張れ!」
ここまで北ちゃんと近付けたのは、全部みんなのお陰。まだ私はひとつも、自分で行動を起こしたことなんてなかった。
まこっちゃんやいっちゃん、壱馬に頼ってばっかりで、いざという時まで何も出来ないのは、そんな自分でいるのは、嫌だ。
会えるかは分からない。行き違いになるかもしれない。でもとにかく、北ちゃんに会いたいという気持ちで、私は足を進めた。そして見つけることが出来た。行き交う人々の中で、一番会いたかった人を。
翔「もしかして、北ちゃんのこと心配して、わざわざ?」
『…うん。ごめん、勝手なことしちゃって、』
「そんな、謝らないで?寧ろ僕がごめんだよ。心配掛けてここまで来させちゃって。…みんなは?」
『いない。私、一人…。』
二人共、まさか一人で来たとは思ってもいなかったようで、目を丸くして私を見た。それだけ普段まこっちゃん達に頼りきりだったんだな、私。
改めて北ちゃんの顔を見ると、まだ痛々しい傷がはっきり残っている。私は自分の為に負ってくれたその傷に、そっと手を添えた。
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作者名:noa | 作成日時:2021年2月22日 17時