無情にも追い越してゆく ページ15
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それから壱馬は、四人が幼馴染で、小さい頃からいつも一緒だったと話してくれた。
Aちゃんの嫌な噂が流れた時も、樹や慎と一緒になんとか止めようと試みたけど、特別目立っていた三人だったが故に、返ってそれが逆効果になってしまったと、悔しそうに話した。
壱｢結局、俺達が出ていけば余計あいつが傷付くだけやって気付いて、ならもう何もせんほうがええんかなって。｣
｢そっか、壱馬達も辛かったね。｣
壱｢Aに比べれば俺達の痛みなんかちっちゃいもんやったけど、けどまあ、正直しんどかったわ。｣
｢本当に大事なんだね、Aちゃんのこと。｣
壱｢そりゃそうよ。…だから、なんつーか、北人はどうなんかなって。｣
｢僕？｣
壱｢だってできないやろ、ほんまに大事に思ってる奴にしか、あんなこと。｣
"なんでAちゃんの為にそこまでしたの？"
"その、なんかこう、凄く大切な人とかじゃないと中々…"
さっき、翔吾が言いかけた言葉を思い出した。
なんで、なんだろう。もちろん大事な友達に変わりはない。でも、それが何よりも大事とか、凄く大切とか、壱馬達みたいにそう言えるほどAちゃんとの関係は深くないし、付き合いだって短い。
それなのになんで僕は、ここまでしてAちゃんを。
陰険な事が嫌いだから？無実を晴らしたかったから？でもじゃあ、これが別の人でも同じことをしただろうか。
もしそれが
今はっきり言えることがあるとすれば、それはたった一つ。
｢…Aちゃん、だったからかな。｣
壱｢どういう意味？｣
｢Aちゃんが辛い思いをしてるのを、見過ごすことなんて出来なかったんだ。それがなんでなの？って言われると、ちょっと上手く言葉にできないけど…とにかくAちゃんだけは、悲しませたくなかった。｣
壱｢Aだけは、ね。…北人さあ、ちょっと目閉じてみ。｣
｢え、なんで？｣
壱｢いーから早く！｣
｢閉じた、けど…。｣
壱｢…じゃあ、明日で地球が滅びるとします。もうこの世の中全部引っ括めてな、芸能人もぜーんぶ引っ括めて、誰か一人に会いに行けるとしたら、誰に会いに行きますか。｣
良く分からない質問をされた中、無意識にパッと浮かんだのはAちゃんだった。
その後意識して考えると、親とか翔吾や壱馬達、好きなアーティストや、美咲の顔も浮かんできた。
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作者名：noa | 作成日時：2021年2月22日 17時
