流れゆく時は ページ13
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壱「北人!」
翔「嘘でしょ、北ちゃん!?」
慎「A、大丈夫?」
樹「なにこれ、どういう状況!?」
『みん、な!』
喧嘩なんか今までしたことないから、殴られる痛みがどんなものか全く知らなかった。でも、彼女が受けた心の傷の方がよっぽども痛い。そう思ったら不思議と痛みはあまり感じず、余計に謝らせなければと強く思った。
Aちゃんが呼んだのか、いつの間にか現れた壱馬が俺に掴みかかる他校の生徒を引き離した。
壱「お前ら、人の仲間に何してくれてんねん!」
「っ、知らねえよ!突っ掛かって来たのそっちだかんな!」
壱「はあ、?んなわけ、」
「嘘じゃねえよ!謝れだとかなんとか言って、」
翔「え、どうしちゃったの、北ちゃん…」
「ちっ、もういい、行くぞ!」
北「っ、待てって!」
騒ぎを不審に思った大人達が警察を呼んだかもしれないことを耳にし、二人は走って逃げて行った。僕も壱馬に無理矢理腕を引かれ、全員その場を離れた。
結局、謝らせることは出来なかった。一人でも二人でも、誤解を解くことが出来れば、例え小さくてもAちゃんが堂々と前を向いて歩くことが出来るきっかけになるんじゃないか、そう思ったのに、何も出来なかった。
涙を流しながら僕を見るAちゃんを、そんな思いで見つめることしか出来ない。けど、壱馬に胸倉を掴まれたことで我に返った。
壱「北人てめぇ、何やっとんねん…、隣にこいつおんねんぞ?そんな状況で喧嘩吹っかけたりすんなや!」
北「っ、ごめん。」
『壱馬やめて!違うの、私が、』
壱「いいからお前は黙っとけ、」
『違うの!北ちゃんは、私の為に…っ』
慎「どういうこと?」
『あの人達が、私のこと知ってて…。通りすがりに色々言われて、それで北ちゃんが、っ。』
樹「謝れって、そういうこと?」
北「…うん。でも、壱馬の言う通り、Aちゃんに何かあったかもしれないのに、本当にごめんね。」
『そんな、…私の方こそ、私のせいで本当にごめんなさい。』
もっとやり方があったんじゃないかと、今考えればどれだけ危険な手段だったか、壱馬の表情を見れば理解できる。それでもあの時の僕は、何故かそれを考える余裕なんてなかった。
Aちゃんの話を聞いた壱馬は、悪かったと僕の胸倉を掴む手を離し、落ちている鞄を拾ってくれた。
そしてこの日はみんなで夕飯を共にすることなく、その場で別れることになった。
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作者名:noa | 作成日時:2021年2月22日 17時