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「良い天気だなあ。」
まだ特別何も思い出のない高校生活も1年が過ぎ、いよいよ新生活のスタート。
吉野北人、高校2年生。今日からまた、至って普通の高校生活を始めます。
既に通い慣れた通学路を歩きながら、あまり活用していないSNSを開くと、新生活にワクワクしている友達の投稿が目に入る。誰々と同じクラスがいいとか、誰々とは離れたくない、とか。
恋人がいる人達は、お互いに同じクラスに慣れますように、と祈りの投稿。こう見えて、冴えない僕にも一応彼女がいる。でも、彼女の希望で周りには公表していない。だからもちろん、一緒に帰ったり登校したことは一度もない。でも休みの日に出掛けたことはある。いつも知り合いがいなそうな遠出だけど。
「おーい、北ちゃーん!!」
「翔吾、おはよう。朝からテンション高いな。」
「いやもう寝坊して!間に合うかなーと思ったけど、間に合った。」
「相変わらずマイペースだな、翔吾は。」
「へへ!あ、それよりクラス替え、めっちゃ緊張しない!?」
「そう?」
「だって俺達が同じクラスになれる最後のチャンスじゃん?しかも北ちゃん、安西さんとも離れるかもなんだよ!?」
大きな声で僕の名を呼びながら、大きく手を振り走ってきたのは、中学も同じたった一人の仲が良い友達の岩谷翔吾。
たまたま告白された場面を見てしまっていたこともあり、彼だけは僕達が付き合っていることを知る、唯一の人物だ。
翔吾は周りに聞かれないように彼女の名前から小声でそう言ってくれたけど、そんな彼女からは朝既に、クラス替え楽しみだね、とLINEが来ていた。翔吾の言う通り、離れてしまうかもしれないのだけど、どうやら彼女はそれでも楽しみだと思う側みたいで。
「でも、楽しみなんだって。クラス替え。」
「…ええ!?そうなの!?なんていうかその、ちょっと変わった子だよね、安西さんって。だってさ、普通彼氏出来たら周りに言いたくない?高校生ってそうなんじゃないの?違うの?」
「あなたも立派な高校生でしょ。」
「そりゃあ俺だって言いたいよ?けど言えないの!だって相手がいないから!」
「じゃあ今年は言えるといいね?」
「…なんかむかつく。」
周りには公表しない理由。それは彼女曰く、恥ずかしいから。
最初は茶化されたりするのが恥ずかしいのかと思っていたけど、最近は相手が僕だからな気がしてる。告白された側なのに、そう思って仕方なかった。
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作者名:noa | 作成日時:2021年2月22日 17時