９６話 ページ46
『ソクジンがいなくなって、私が泣かないとでも思った？』
「それは…、でも俺はジョングクを失ってからのAを見ていたから…」
『それなら、私が刺されるべきだった！』
「っ、それはだめだ…っ」
思わず大きな声を出した俺に、Aはその大きな瞳を少し見開いた。
わかってる。
自分がしたことはきっと、正しい行いではない。
Aが苦しんでる姿を見たくないっていうのも、
結局は俺のエゴだったのかもしれない。
だけど、
「ただ、俺はAに幸せになってもらいたかったんだよ」
『…っ、』
過去に戻ったって、俺が変えられたことなんて結局何もなかった。
Aはどんどんジョングクに惹かれていったし、ジョングクはずっといい男だったし。
俺は…相変わらず脇役で。
まぁ、でもさ。
「今はいい気分なんだよ。
やっとAのことをちゃんと守れた気がして」
『やっと？』
「うん、やっと」
頷いた俺に、Aが目尻に溜まっていた涙を指先で拭い、それからにっこりと微笑んだ。
『ソクジンは、ずっと私のことを守ってくれていたよ？』
「…そんなことないよ」
『あるの』
「…」
『最初はね、あの海でのこと。
猫を追いかけて溺れた私を助けに来てくれた時。
私あの時、水の中から這い上がって、飲んじゃった水を吐き出しながらね、
大丈夫かって心配そうな顔で、空と、海と、私を映していたソクジンの綺麗な瞳に…
生まれてはじめての恋をしたんだよ』
「…っ」
どうして、今そんな話をするんだよ。
『中学校に入ったばかりの時は、最初クラスに馴染めなかった私を気にかけて一緒にお弁当を食べてくれたでしょ？うちのお母さんの卵焼きが食べたいからだなんて言ってごまかしてたけどさ。
それから。
高校に入って、私がちょっとだけ遊んでた男の子覚えてる？』
「…覚えてるよ」
『遊んでる時に撮られた写真、その子がクラスの男子に見せびらかしてるのをやめさせてくれたでしょ？
皆の目がかわいそうだ。とか言って』
「…あったね」
なんか、いちいちかっこついてない思い出ばかりだな。
『ふふ。全然かっこよくないよね。大好きな映画のヒーロー達とは程遠い』
「ほんとにね」
『だけどね。
私はそんな風に、むやみに人を傷つけないで、あなたらしいやり方でいつも私のことを守ってくれたソクジンのことがね、
今も、大好きなんだよ』
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しのん。 - とっても面白かったです。こういうお話が書けるの本当に尊敬しまふ！お二人の作品はとても好きなので、お二人のコラボ作品と知って読んだら、明日朝早くからお仕事なのに、最後まで読み切ってしまいました！本当に面白かったです！また新作楽しみにしてます！ (2022年8月10日 4時) (
レス) @page49 id: 5420faf554 (このIDを非表示/違反報告)
KB - ミロさんとまゆう。さん、どっちも最高です!!! (2021年9月20日 23時) (レス) id: 5f0961fe40 (このIDを非表示/違反報告)
coral(プロフ) - めちゃくちゃ泣きました、ほんとに感動しました。是非またお二人のコラボ作品を出して頂きたいです！ (2021年9月7日 20時) (レス) id: 76a1fad787 (このIDを非表示/違反報告)
わたし。(プロフ) - 映画化してほしい。なってもおかしくない！ (2021年4月5日 17時) (レス) id: 373e34b3f9 (このIDを非表示/違反報告)
chi-(プロフ) - 涙目で霞みながら最後まで読みました。素晴らしかったです。ユンギもユンギっぽくてニヤけてしまった。グクのことを思うと辛いけどほんとに良いお話で読んで良かったです。ありがとうございました。 (2020年11月28日 19時) (レス) id: c1d012338f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：君色。
x他1人 | 作成日時：2020年8月13日 22時
