８７話 ページ37
…静かな図書室に、私の声だけが悲しく響く。
ヘーゼルナッツ色の瞳をした白猫も、司書も、白猫の絵も…そこには無かった。
『なんで…、なんでよっ。』
その場に泣き崩れる。
これが、最後の望みだった。
私にソクジンを助けられる最後の希望だった。
『お願い…、ソクジンを助けて…。』
泣きすぎて掠れた声は、静かな図書室に消えていった。
「…お前って、本当にいつもうるさいよな。」
低く掠れた声に、更に涙は溢れ出す。
顔を上げれば、ヘーゼルナッツ色の瞳が私の顔を見てギョッと目を開く。
YG「お前、顔ひでぇよ。」
『ねぇ、どういうこと！？なんで、ソクジンが刺されちゃうの？
ソクジンが死んじゃう。』
ユンギさんの胸倉を掴んで、必死に訴える。
YG「…仕方ないだろ。あいつの、頼みだったんだ。
あいつがお前を救うためにガムシャラになって頑張りまくったあの夏は元通りにしていい。
変える必要がなくなった。
…その代わりに、あの事件が起きる少し前に返してくれ。
これが、あいつの望んだ未来だったんだよ。」
ユンギさんが教えてくれた、ソクジンの最後の頼み。
何それ。
何勝手なことやってくれてんの？
ソクジンはいつだってそう。
大切なことは全部1人で抱えこむ。
タイムリープの間だって、たった1人で未来を変えようとしてくれてさ。
それに、私を好きだってことも、ずっとずっと言ってくれなくて…。
私はずっとずっと、ソクジンに言って欲しかったのに。
私はずっと、ソクジンのその言葉を待っていたのに。
YG「それで。
全部を知ったお前はどうしたい？」
『私は、ソクジンを助けたい。』
YG「俺は無償で人助けをやってるわけじゃないんだけど。」
ユンギさんはじろっと冷たい視線を私に向ける。
背中がゾクリとする。
けれど、ここで引き下がるわけにはいかない。
『私はどうなったっていい。
ユンギさんが望むものなら、なんだって私から奪ってよ。
だからお願い。ソクジンだけは、ソクジンだけは失いたくないの。』
彼の服を掴む手にギュッと力をこめる。
『だって、ソクジンは…私の大切な、』
YG「幼なじみ？」
そう、幼なじみ。
私の大切な幼なじみ。
『…それだけじゃない。』
涙が込み上げてきて、声が震える。
けれど、今だけ、私の胸の奥にずっと隠してきた言葉を言うことを許して欲しい。
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しのん。 - とっても面白かったです。こういうお話が書けるの本当に尊敬しまふ！お二人の作品はとても好きなので、お二人のコラボ作品と知って読んだら、明日朝早くからお仕事なのに、最後まで読み切ってしまいました！本当に面白かったです！また新作楽しみにしてます！ (2022年8月10日 4時) (
レス) @page49 id: 5420faf554 (このIDを非表示/違反報告)
KB - ミロさんとまゆう。さん、どっちも最高です!!! (2021年9月20日 23時) (レス) id: 5f0961fe40 (このIDを非表示/違反報告)
coral(プロフ) - めちゃくちゃ泣きました、ほんとに感動しました。是非またお二人のコラボ作品を出して頂きたいです！ (2021年9月7日 20時) (レス) id: 76a1fad787 (このIDを非表示/違反報告)
わたし。(プロフ) - 映画化してほしい。なってもおかしくない！ (2021年4月5日 17時) (レス) id: 373e34b3f9 (このIDを非表示/違反報告)
chi-(プロフ) - 涙目で霞みながら最後まで読みました。素晴らしかったです。ユンギもユンギっぽくてニヤけてしまった。グクのことを思うと辛いけどほんとに良いお話で読んで良かったです。ありがとうございました。 (2020年11月28日 19時) (レス) id: c1d012338f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：君色。
x他1人 | 作成日時：2020年8月13日 22時
