第3話 結城 昴流 ページ4
どくん、と心臓が脈を打った。
否、それは人間として当たり前の機関の運動に過ぎないのだが、その度合いが何時もより大きかったのに、自分自身が驚きを隠せなかったからだ。
その視線の先は、とある男。
きらきらと星の瞬く瞳を俺に、(……本当はこの舞台に関してなのかも知れないが)向けている姿に、何故か激しく身体が反応を示した。
(……いや、この人男だぞ?)
そう思って、隣に立ったヒロインの女を見やる。
公演前はあれほど、「今日は一段と綺麗だね。普段やれないから、ヒロインとかの役貰ったら、嬉しいよね」ともてはやしたものだが、今は何の感情も無い。
「寧ろ、どうしてあんな言葉を掛けたんだろう」、とさえ考えてしまって、慌てて頭を振る。
あの至って普遍なTシャツとパーカーの方が、ヒロインの煌びやかな衣装よりもより色鮮やかに俺の目に映った。
「……んで、どうしたの?」
かたん、とキーボードを打ち終わって、それから赤焦げ茶の髪をした物書きは、猫のように目を細めた。
その奥に潜んだ興味津々な瞳を見てしまってからは、逃れることは出来ないのである。
「……名前だけ、聞いてきたんだ」
「ほう?奥手のお前さんにしては珍しいことをしたね」
「べ、別に俺は奥手じゃない!!」
「自分を繕っていないと本心を喋れないんだろう?」
「……」
ぐっ、と口を噤む。
この年下の男は、悔しいながらも自分より弁が立つ。
そのまま黙っていると、「ふはっ」と渇いた笑い声が聞こえた。
「嗚呼済まない。
ほら、飴ちゃんあげるから拗ねないでくれよ」
「俺を子供扱いするな」
そう言いながらも飴を受け取り、口に頬り込むと爽やかな檸檬の味がほんのりと広がる。
悪趣味な男は、「まぁ、せいぜい頑張りなよ。お前さん」と茶化したように言って、自分も紅色の飴玉を口に放った。
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The_barserker(プロフ) - 終わりました (2018年6月11日 22時) (レス) id: e5e587038b (このIDを非表示/違反報告)
The_barserker(プロフ) - 続きやります。更新します (2018年6月11日 21時) (レス) id: e5e587038b (このIDを非表示/違反報告)
The_barserker(プロフ) - 出かけるんで、途中保存しました。一旦終わります! (2018年6月11日 19時) (レス) id: e5e587038b (このIDを非表示/違反報告)
The_barserker(プロフ) - 更新します (2018年6月11日 19時) (レス) id: e5e587038b (このIDを非表示/違反報告)
藍雲(プロフ) - 更新しました! (2018年6月8日 0時) (レス) id: b499e5a85b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨模様。と参加者の皆様 | 作者ホームページ:http:/
作成日時:2018年6月4日 22時