片思いの君はあの子のトリコ【呪術廻戦】

片思い2 ページ2

『硝子、タバコってどんな感じなの？美味しい？』



「なんで？」



『いや、何となく』




放課後、硝子が教室でいつものようにタバコを吸っているのを見て、ふと気になり聞いてみた。すると硝子は口に咥えていたタバコを取って、灰色の煙を出した後、こちらを見る。



まだ青い空を横切る灰色の煙は、まるで私の心の色のようだ。




「…タバコは、美味しくはないな」



『へぇ、じゃあどうして吸ってるの？美味しくないなら吸う必要なくない？』




そう聞くと、硝子は机にある灰皿にタバコを擦って外に投げ捨てると、もう一本タバコを出して火をつける。そして一服したあと、もう一度振り返ってニッと笑った。





「精神安定剤みたいなものだよ」



『精神安定剤』





精神安定剤、か…
身体に悪いからってタバコを吸おうとは思わなかったけど、意外といいかもしれないなと思っていると、ガラリとドアが開いた。




「硝子！A！帰ろう」



「お、一葉」




一葉だ。
彼女は私達に花のような笑みを見せて駆け寄ると、硝子の口からタバコを取って呆れたように硝子を見つめ、今度は私を見た。




「硝子やめなって言ったじゃん！そう思うよね、A」



『…そうだね』




いつもならば『そうだよね』と即答できていたが、なぜだか今日は言えなかった。




少しいいなって、思っちゃったからかな。




しかしそれに一葉は気付かずに、「ほらぁ」と硝子に言うと私達の腕を引っ張る。





「じゃ、帰ろ！」





…一葉がタバコを吸った時は、煙は白色なのかな。




タバコの煙に灰色以外はないというのに、なぜだかそう思ってしまった。彼女の笑顔が、眩しかったから。




いいな、幸せそうで。







白は明るい色で、








何色にも染まることができて、







その明るさは一葉のよう。









そして、悟のよう。









灰色の私とは、違う。







…お似合いだね。
悔しくも、心の底からそう思ってしまうんだ。

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