同盟 に ページ46
・
大事な人、と言われて思い浮かぶ人はたくさんいて、でもなぜか得意げに鼻を鳴らすマルフォイくんの顔が鮮明に脳をよぎる。
「じゃあ」
先生は片手をあげて、校門への道を歩いていった。その時、私は初めて先生が大きなスーツケースを引いていることに気がついた。
ルーピン先生の背中を見送って校内に戻ると、ちょうど廊下で思い詰めたような表情をしているポッターくんと鉢合わせた。
「……やあ」
「こんにちは。きみも残ったんだね」
「うん。……今日はそういう気分じゃなかったんだ」
ポッターくんの声は沈んでいた。その暗い表情にさっきのルーピン先生を思い出して、「あのね、」と口を開いていた。
「さっきルーピン先生が中庭を歩いてて……大きなケースを引いてたんだけど……」
「その、なんていうか……」
先生の後ろ姿を思い出して思わず言い淀むと、ポッターくんは悲しげに微笑んで「ホグワーツをやめるみたいだった？」と首を傾げた。
「え、あ、うん……」
「もしかして、本当に？」
私がぱっと顔を上げると、ポッターくんはなんでもないことみたいに頷く。
「うん。自分から辞任したんだって」
「……そっか」
「寂しいね」
驚いた顔をする彼を見上げて、私は薄く微笑んだ。
「だってきみ、今泣きそうな顔してる」
「……僕のせいなんだ」
「もっと僕が強かったら、ルーピン先生は辞めずに済んだのに」
マルフォイくんの瞳とは違う、深い森のような緑色が寂しげに揺れていた。悔しそうな声と硬く握られた拳に彼の苦悩が垣間見えて、私は力強く言った。
「じゃあ、一緒に強くなろう」
「え？」
「さっき先生が言ってたんだ」
「優しさも、強さも、どっちも大事な人を守るためには必要だって」
「私が守りたい人は『そんなの迷惑だ』って言うかもしれないけど……」
マルフォイくんが不機嫌そうに腕を組んでいる姿がありありと思い浮かんで苦笑いを浮かべた。
「でも、私はその人のためにもっと強い魔女になりたい」
「ポッターくんと同じだよ」
にっこり笑って、私はポッターくんに手を差し出した。柔らかな日差しがまぶしくて、窓から吹き込んだ風が胸の内の憂鬱を吹き飛ばしていくみたい。
「だから、一緒に強くなる同盟！」
私の言葉を聞いて少しだけ目を見開いた彼は、照れたように笑ったあと、「うん。よろしく」と握り返してくれた。
「……君は僕を不快にさせることにかけては天才的だな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 412人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねこ(プロフ) - この出会いにありがとう さん の花言葉の意味がとっても素敵で相手のことをとっても大切に思っているのが伝わってほっこりしました(՞ ܸ. .ܸ՞)︎♡ 素敵な作品をありがとうございます.ᐟ.ᐟ (11月20日 0時) (
レス) @page44 id: 2eaa5d84c7 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - ぽんずさん» コメントありがとうございます！素晴らしい賞を頂けて嬉しいです…！笑 ぽんず様こそお身体に気をつけて、これからも更新を楽しみにお待ちいただけたら幸いです。 (2023年3月17日 22時) (レス) id: be1363d7b2 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんず(プロフ) - 初めまして！このお話の更新が出てるととっても嬉しくて毎話キュンキュンしてます！ホグワーツでこれがやりたかった夢大賞No.1ですありがとうございます！！！ご自愛ください！ (2023年3月17日 21時) (レス) @page46 id: 7bdddba4b2 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 雨中と猫。さん» ありがとうこざいます！ほのぼの柔らかい雰囲気を目指して書いていたのでそう言っていただけてとっても嬉しいです…！遅筆ですが更新を楽しみにお待ちいただけたら幸いです。 (2023年3月2日 21時) (レス) @page8 id: be1363d7b2 (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - 本当に今さっき作品を見つけて読まさせて頂きました新参者です……！マルフォイくんとの緩やかでほのぼのとしていながら心があったかくなるお話がめちゃくちゃ可愛くて素敵です！続き楽しみにしております、お身体壊さない様更新頑張ってくださいー！！ (2023年3月2日 21時) (レス) @page23 id: d60c007837 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハル | 作成日時：2023年2月26日 0時
