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「…僕のこと、覚えてない?」
ジュンギュさんからの思いもよらなかった一言に
グラスに伸ばした手が止まる。
覚えてない?って…
……私、どこかでジュンギュさんと会ってるってこと?
「…え、と…私たち、
お会いしたことありました…っけ、?」
ぎこちなく笑いながら首を傾げてみる。
それから、少しの間があって
「……ふぅん、やっぱり覚えてないんだ」
ジュンギュさんは顎に手を当てて、唇を突き出す。
…え、やっぱりどこかで会ってるの?
ほんとに…?
……だとしたら、いつ? どこで…?
いくらジュンギュさんの顔を見つめてみたって、
何も思い出せない。
「…思い出せない?」
……はい、全く。
ぐるぐるぐるぐる思考を巡らせてみても、
ひとつの心当たりも見つからない。
「…ごめんなさい
どこでお会いしましたっけ…?」
「…昨日」
「…え、?」
私の顔を見つめたまま
ジュンギュさんは ぽつりと呟いた。
昨日…って、
「…昨日、会ったんだけど…やっぱり思い出せない…?笑」
…昨日、会ったの…?
私がジュンギュさんと…?
……ほんとに、?
そうだとしたら、どうして昨日会ったばかりなのに
私は何も覚えてないの…?
ジュンギュさんの、人違いじゃないの?
「…Aちゃん
昨日、どこいったか思い返してみて?」
昨日…は、
確か…出歩いたとしたら、あのバー…。
あのバー…?
「…結構手かかったんだけどなぁ…」
手、かかった…?
手かかったって…
…え、いやいや、まさか、無いよね。
ジュンギュさんは私の表情から
焦りを汲み取ったのか、口角を少し上げる。
「…う、嘘…」
まさか、そういうこと?
もし私が今想像していることが本当なら、
随分大変な話だ。
ジュンギュさんはひとつ、微笑んで口を開いた。
「…全部、教えてあげよっか…?」
「…昨日、僕がAちゃんを介抱したこと」
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作者名:LCS | 作成日時:2023年8月16日 15時