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それに気付いてしもたから・・・
年始の挨拶周りを終えて、
帰途に着く途中。
大阪の新歌舞伎の前を横切ると、
立て看板の周りに人垣が出来てあった。
「ほんまもんのおなごより別嬪やなあ」
「広島では有名な、桐山晴いう役者らしいで」
「いっぺんでええから、
近うで見てみたいもんや」
噂の的になっておるんは、とも。
人垣を分けいって見ると、
辻番付の三番目に、
やはり、桐山晴の名があった。
桐山茶屋のご主人が、
「桐山晴の人気は留まることを知らず、
広島の中歌舞伎の世界では収まりきらへん、
大阪の大歌舞伎の舞台に立つ日も近いやろう」
そう褒めちぎってはったんを、
思い出す。
この建物の中に、ともがおる。
途端に、さざめき出す胸。
今日の公演はもう終わる頃やろうか。
見損ねてもうたな。
ともの舞台は、
何度となく見たけれど、
何度見ても、
その世界に引き込まれ、
魅了されてしまう。
会いたい・・・
一目でええから。
小雨が降り出したのをええことに、
雨宿りのふりをして、
看板の前の軒下で、
しばらくぼんやりしておったら・・・
「嘘やろ。
ほんまのもんの晴が出て来たで！」
「うわあ。
絵より実際の方が数段美人や」
同じく、
雨宿りしておった三人の男衆が、
歓声をあげた。
その声につられて、
まさかと思いつつ、
顔を上げると・・・
番傘を差した、
艶やかな着物姿のともが、
濱田さんに付き添われて、
人力車に乗り込むところやった。
女形の鬘はしてないものの、
神々しいまでの美しさを放ってる。
勇ましかった男どもは、
ともの冷ややかな笑みに怖気付いたんか、
その場から動かへん。
「ともっ・・・」
堪え切れずに声をかけると、
ともは、
少し驚いたように目を見開いて、
俺の方を振り返った。
「とも、大阪に来たんなら、
いっぺんでええ、家に寄って欲しい。
家のもん、みんな、とものこと、待ってる」
ともはすぐ前に向き直って。
「はよう出して下さい」
冷たい声で、車夫にそう告げた。
車輪のからから回る乾いた音が、
冬の町に響き渡る。
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てんよ(プロフ) - 君がため。完結お疲れ様でした！最後、ひょっとして赤くん…と悲しい結末も想像したりもしましたが、無事に2人が結ばれてよかったです笑 そして次は緑赤なのですね！続きも楽しみにしています〜(//∇//) (2021年8月22日 15時) (
レス) id: aa8042bdaf (このIDを非表示/違反報告)
じんじん(プロフ) - いっぱい泣いてしまいました！正直時代物だと少し構えてしまう部分はあったのですが、fool様の作品は続きが気になり、一気に読んでしまいました！ (2021年8月21日 4時) (レス) id: b773bba464 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - 緑くんが幸せになって嬉しいのに完結が寂しい、、時代物初でしたが、世界観が素敵でした！緑くんが儚くて美しすぎて、メロメロでした！！赤緑大好き！緑くんを溺愛する赤くん、最高です！！私もシルエットに並びました！これからもfoolさんのお話楽しみにしてます！！ (2021年8月18日 20時) (レス) id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
siman(プロフ) - 完結しちゃったんですね涙！もっと読んでいたかったというのが本音です。私の中でも特別大好きな作品になりました！この先の二人もみたい！と密かに思っていたりします、でも本当にありがとうございました！あ〜幸せになって良かったです！ (2021年8月18日 17時) (レス) id: ee8c46c09c (このIDを非表示/違反報告)
mom(プロフ) - 幸せをありがとうございました！情景や登場人物の表情や心情が鮮やかで、そのお陰か特に緑くんの健気さと美しさが際立っていたように思います。気が向いた時でいいので、呉服屋の若旦那になった緑くんと赤さんの平和で甘い日常を見たいな…なんて。君がためロスです！笑 (2021年8月18日 16時) (レス) id: 9127d19116 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fool
| 作成日時：2021年7月31日 20時
